DeepMindが「AlphaEvolve」発表:Geminiでアルゴリズムを自律設計・最適化
Google DeepMindはGeminiを活用してアルゴリズムを自動発見・最適化するエージェント「AlphaEvolve」を発表した。データセンターの計算リソースを0.7%回収したほか、AIカーネルの高速化や長年の数学難題の更新を達成。現在は一部の研究者向けに早期アクセスを準備している。

AIが自身の訓練プロセスや稼働基盤を自ら書き換える未来が、現実のものになりつつあります。
Google DeepMindは、高度なアルゴリズムの発見と最適化を自律的に行うコーディングエージェント「AlphaEvolve」を発表しました。
このシステムは、探索の幅を広げるGemini Flashと、深い考察を担当するGemini Proを組み合わせたものです。コード形式で提案されたアルゴリズムを自動評価システムで検証・採点し、進化論的アプローチで継続的に改善していきます。
Googleのインフラを1年間密かに支えていた実績
AlphaEvolveは単なる研究室の実験ではありません。すでに1年以上にわたり、Googleの大規模本番環境で運用されています。
データセンター管理システム「Borg」向けに発見したヒューリスティックは、Googleの全世界のコンピュートリソースの0.7パーセントを継続的に回収し続けています。Googleの規模を考えれば、これは莫大な電力とコストの削減です。
さらにハードウェア設計にも踏み込み、次世代TPUの行列乗算回路における不要ビットを削除するVerilogコードを生成しました。すでに次期チップへの組み込みが進んでいます。
AI訓練そのものの効率化にも貢献しており、Geminiの行列乗算カーネルを23パーセント高速化し、モデル全体の訓練時間を1パーセント短縮しました。また、GPU向けのFlashAttentionカーネルの実装でも最大32.5パーセントの高速化を達成しています。
数学界で300年未解決の難問も更新
基礎数学の領域でも目覚ましい成果を上げています。
4x4の複素行列乗算において、48回のスカラー乗算で計算する新手法を発見しました。これは1969年のシュトラッセンのアルゴリズムを半世紀以上ぶりに更新する成果です。
幾何学や数論などの未解決問題50問以上をテストしたところ、約75パーセントで人類の既存最高峰の解を再発見し、20パーセントで従来の最良解を更新しました。300年の歴史を持つ「接吻数問題」でも、11次元において593個の外球という新たな理論的下限を打ち立てています。
なぜ重要か
AlphaEvolveの真の衝撃は、AIによる「自己再帰的な性能向上」のサイクルが実用レベルで回り始めた点にあります。
Geminiがコードを書き、そのコードがGemini自身の訓練時間を短縮し、次世代TPUの回路を効率化し、データセンターの空きリソースを捻出しています。これまで世界トップクラスのシステムエンジニアが数週間かけていた低レイヤーの最適化が、数日の自動計算に置き換わりつつあります。
DeepMindのアプローチの巧みさは、大言語モデルの柔軟な発想力と、厳格な自動評価器を組み合わせた点です。人間が読めて保守しやすいコードを出力させることで、実運用への投入を極めてスムーズにしています。
一方で課題もあります。この仕組みは、成否をコードで客観的に測定できる問題でしか機能しません。曖昧な仕様や人間の好みが関わる領域にはそのまま適用できませんが、コンパイラ、チップ設計、科学計算といった基盤領域における開発速度を劇的に塗り替えることは確実です。
情報源 (1)
- deepmind.google(新しいタブで開きます)原文deepmind.google