ブリタニカとウェブスター辞書がOpenAIを提訴:10万本の記事無断学習を主張
ブリタニカ百科事典とウェブスター辞典が OpenAI を著作権侵害などで提訴した。約 10 万本の記事が無断でモデル学習や ChatGPT の RAG に流用されたと主張。AI のハルシネーションを自社名義で回答した商標法違反も訴えている。

言葉の意味や正確な知識を調べるとき、これまではウェブスター辞典やブリタニカ百科事典を頼るのが定番でした。しかし現在、多くの人が同じ作業をChatGPTに丸投げしています。
こうした状況を受け、老舗の知識プラットフォームが法廷闘争に踏み切りました。3月16日、ブリタニカ百科事典とその傘下にあるメリアム・ウェブスターは、OpenAIを相手取り大規模な著作権侵害を理由とする訴訟を提起しました。
無断学習からハルシネーションの責任転嫁まで
ブリタニカは約10万件に及ぶオンライン記事の著作権を保有しています。訴状によると、OpenAIはこれらの記事を許諾なくスクレイピングし、大規模言語モデルの学習に利用したとされています。
侵害の申し立ては学習データの収集だけにとどまりません。ChatGPTの出力がブリタニカの記事を部分的または全体的にそのまま逐語引用しているケースがあることも指摘されています。
さらに問題視されたのが、ChatGPTのRAG(検索拡張生成)機能です。OpenAIが外部記事を参照して最新の回答を組み立てる仕組みが、本来ウェブパブリッシャーに届くはずのアクセスや収益を奪い、直接的な競合回答を生み出していると主張しています。
加えてブリタニカは、商標法であるランハム法違反も主張しています。ChatGPTが事実無根のハルシネーションを出力した際、その誤った情報の出典をあたかもブリタニカやウェブスターであるかのように虚偽の帰属表示を行ったためです。
OpenAIに対する訴訟は、ニューヨーク・タイムズやZiff Davis、北米の複数の新聞社からも相次いでいます。ブリタニカ自身もすでにPerplexityを同様に提訴しており、係争が続いています。なお、OpenAIは今回の提訴に関する取材に応答していません。
なぜ重要か
今回の訴訟は、AI開発会社に対する著作権包囲網が新たな局面に突入したことを示しています。
これまで争点となってきた学習データの公正利用(フェアユース)論争に加え、今回はRAGによる即時回答と、誤情報の商標への帰属という2つの急所が突かれました。
とくにハルシネーションを権威ある辞書の名前で出力されてしまう点にランハム法を適用したのは、非常に巧みな戦略だと考えられます。AIが勝手に嘘をつき、その看板にウェブスターの名前を勝手に使われるとなれば、単なる学習の権利関係を超えた信用毀損の領域に入るためです。
ユーザーにとってChatGPTによる解説は極めて便利ですが、一次情報の発信元がトラフィックを奪われて消耗すれば、ネット上の良質な知識ベースそのものが痩せ細るリスクをはらんでいます。
Anthropicが海賊版書籍の利用をめぐり作家側と15億ドルの和解に至った事例があるように、学習と検索の両面でコンテンツホルダーへ正当な対価を支払う仕組みを作らなければ、OpenAIの検索ビジネスは法的に立ち往生することになりそうです。
情報源 (1)
- techcrunch.com(新しいタブで開きます)原文techcrunch.com