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研究

画像生成AIを支える「拡散モデル」小史:物理学着想から創薬まで広がる応用

公開 拡散指数 31

画像生成AIの中核技術である拡散モデルの歩みと仕組みが解説された。熱力学に着想を得たこの技術は、ノイズから元のデータを復元する逆過程を学習し、OpenAIのCLIPと組み合わせることで精度の高い生成を可能にした。現在では画像にとどまらず、音楽生成やタンパク質設計など医療分野へも応用が広がっている。

画像生成AIを支える「拡散モデル」小史:物理学着想から創薬まで広がる応用
画像:techcrunch.com

角砂糖を温かいコーヒーに落とすと、砂糖の粒子は自然に広がり、やがて元のかたちを失って均一に溶け合っていきます。物理の世界では、このエントロピーが増大する拡散現象を巻き戻して角砂糖を復元することはできません。

しかし機械学習の研究者たちは、このプロセスを逆回転させる仕組みを作り出しました。画像に少しずつノイズを加えて完全な砂嵐にしてしまい、そこから段階的にノイズを取り除いて元のデータを復元する技術、それが拡散モデル(Diffusion)です。DALL-E 2 や Stable Diffusion を支えるこの技術は、DeviantArt や Canva などのクリエイティブプラットフォームに組み込まれ、今年大きな広がりを見せました。

ただし、この技術のポテンシャルは画像生成の枠をはるかに超えています。

不安定だった敵対的生成ネットワークの克服

拡散モデルが台頭する以前、画像生成の主役は敵対的生成ネットワーク(GAN)でした。ディープフェイクアプリや、架空の人物の高精細な顔写真を生成できる Nvidia の StyleGAN などがその代表例です。

GAN は偽データを作る生成器と、本物か見分ける識別器を競わせる仕組みです。しかし、この二つのモデルを同時に学習させる作業は本質的に不安定で、生成器が同じような画像ばかり出力して破綻するモード崩壊に頻繁に見舞われました。膨大なデータと計算資源が必要で、大規模化が難しかったのです。

拡散モデルは十年前から理論自体は存在していましたが、実用化の引き金を引いたのは OpenAI の CLIP でした。CLIP はテキストと画像を結びつけるスコア付けを行い、彫刻家が弟子に指示を出すように、ノイズ除去の各ステップがプロンプトに近づくよう道案内を務めます。

音楽生成から新薬・DNA配列の設計まで

データをノイズ化して復元できるなら、対象は絵画である必要はありません。

音楽の分野では、Stability AI の支援を受ける Harmonai が楽曲データから音楽クリップを生成するモデルを開発しました。また Riffusion という有志プロジェクトは、音声をスペクトログラムという視覚画像に変換し、画像用拡散モデルを使って楽曲を生成する機転を利かせています。

さらに踏み込んでいるのがバイオ医療です。スタートアップの Generate Biomedicines やワシントン大学のチームは、拡散モデルを使って特定の機能を持つタンパク質をゼロから設計する試みを進めています。ワシントン大学のモデルは、血中カルシウムを調整する副甲状腺ホルモンに対して、既存の医薬品よりも強力に結合するタンパク質を発見することに成功しました。

オープンソースの OpenBioML では、特定の細胞でのみ遺伝子発現を促す DNA 配列をテキスト指示から生成する「DNA-Diffusion」の開発も進んでいます。

なぜ重要か

一般の開発者やクリエイターにとって、表現の敷居は劇的に下がりました。音声データを画像として処理した Riffusion のように、既存の画像モデルを流用して全く新しいツールを仕立てることも可能です。ただし、学習データをそのまま吐き出してしまう問題が指摘されており、商用利用における著作権侵害のリスクは依然として残されています。

産業全体への影響として見逃せないのは、バイオテクノロジーへの浸透です。画像やテキストといったデジタルコンテンツの枠を飛び出し、新薬開発や遺伝子治療の設計サイクルを短縮できることが実証されつつあります。

私たちが評価したいのは、GAN が抱えていた学習の不安定さを、熱力学に着想を得たステップごとの確率処理で見事に解消した点です。計算負荷の高さという課題は残っており、かつて GAN が取って代わられたように将来さらに効率的な技術へ移行する可能性はありますが、現時点で最も汎用性が高く信頼できるアーキテクチャであることは間違いありません。

情報源 (1)

  1. [1]
    techcrunch.com(新しいタブで開きます)原文techcrunch.com

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