ボストン・ダイナミクスがSpotにChatGPTを統合、喋る観光ガイド犬に
Boston Dynamicsは四足歩行ロボット「Spot」にChatGPTや画像認識モデルBLIP-2などを連携させたツアーガイドのデモを公開した。周囲の状況を把握しながら質問に答え、皮肉屋などのキャラクター付けにも対応する。基盤モデルによる自律的な判断力を実機で実証した形だが、応答に約6秒の遅延やハルシネーションなどの課題も残る。

Boston Dynamicsが、四足歩行ロボット「Spot」にヒゲと目玉の飾りをつけ、ChatGPTを搭載したツアーガイドロボットに仕立て上げました。
同社のプリンシパルソフトウェアエンジニアであるMatt Klingensmith氏らが公開したブログによると、このプロジェクトは基底モデルをロボットの自律制御にどう応用できるかを検証するコンセプト実証です。既存のSpotの運動性能に、ChatGPTをはじめとする複数のAIを組み合わせることで、周囲を見渡しながら来訪者と会話できるロボットを作り出しました。
Pythonのコードを書かせるプロンプト設計
システム構成は非常にシンプルかつ合理的です。
ハードウェア面では、3Dプリントした耐震マウントにReSpeaker V2マイクスピーカーを取り付け、Spot本体に接続しました。さらにアームのグリッパーに仮装を施し、音声データに合わせてアームを開閉させることで、まるでパペット人形が口をパクパクさせて話しているような演出を加えました。
頭脳となるLLMには、当初GPT-3.5を使い、後にGPT-4へとアップグレードしました。マイクロソフトの研究に倣い、ChatGPTには「Pythonスクリプトの続きを書かせる」ような形式でプロンプトを入力しています。指示できる動作は指定した場所に移動する、発話する、質問するという最小限の関数に絞り込みました。
周囲の状況認識には画像認識モデルBLIP-2を採用し、毎秒約1回カメラ画像を要約してプロンプトに送ります。来訪者の声はOpenAIのWhisperで文字起こしし、応答の音声合成にはElevenLabsを使用しました。
創業者を探してIT窓口へ向かう珍事も
実験では、単なる受け答えを超えた興味深い振る舞いが見られました。
来訪者から「Marc Raibert(創業者)は誰?」と聞かれたSpotは、「わかりません。ITヘルプデスクに聞きに行きましょう」と答え、本当に自律歩行でIT担当者の席へ向かいました。また「両親は誰?」という質問に対しては、社内に展示されている初代SpotやBigDogの場所へ移動し、彼らは自分の先輩だと紹介したといいます。
皮肉屋な性格を指定したところ、そのキャラクターを崩さずに案内を続け、終いには社内で未確認生物のビッグフットを探すツアーを勝手に始めました。
一方で課題も明白です。質問してから返答までに約6秒の遅延が発生するほか、荷役ロボットのStretchを「ヨガ用のロボットです」と真顔で紹介してしまうなど、LLM特有のハルシネーション(もっともらしい嘘)も確認されています。
なぜ重要か
私たちは、この試みが身体性を持つAI(Embodied AI)の実用化に向けた極めて賢い近道を示していると考えます。ロボット専用の大規模モデルをゼロから開発するのではなく、実績のある足回りの制御SDKの上に、市販のマルチモーダルAPIを意思決定レイヤーとして重ねるアプローチです。
ツアーガイドというエンタメ用途を選んだ点も合理的です。完璧な正確さが求められる現場と違い、多少の嘘やユーモアが許容される領域だからこそ、現在のLLMの強みを活かすことができます。
しかし、産業応用を見据えると課題は山積みです。6秒という遅延時間は現場での実用には長すぎますし、クラウド依存のシステムは通信障害やAPIの停止でロボットが立ち往生するリスクを抱えています。現在の構成はエンタメとしては満点ですが、過酷な現場で使える自律エージェントにするには、エッジ側での推論と決定論的な安全制御が依然として不可欠に見えます。
情報源 (1)
- bostondynamics.com(新しいタブで開きます)原文bostondynamics.com