本文へスキップ
IFAI

業界動向

Anthropic、米国防総省とAI契約交渉を再開 「供給網リスク」指定回避へ

公開 拡散指数 61

Financial Timesによると、Anthropicのダリオ・アモデイCEOが米国防総省との協議を再開した。AIの無制限な軍事利用を拒絶したことで関係が悪化し、国防総省から「サプライチェーンリスク」指定を警告されていた。指定されれば防衛産業全体でClaudeの利用が禁じられる恐れがある。

Anthropic、米国防総省とAI契約交渉を再開 「供給網リスク」指定回避へ
画像:techcrunch.com

米国防総省から国家安全保障上のサプライチェーンリスクに指定され、事実上のブラックリスト入り寸前まで追い込まれた Anthropic が、再び軍との交渉の席に戻りました。

英フィナンシャル・タイムズやブルームバーグの報道によると、Anthropic のダリオ・アモデイ CEO は国防総省のエミル・マイケル次官(研究・技術担当)との協議を再開しました。同社が米軍との関係を修復し、防衛産業からの締め出しを回避するための土壇場の交渉とみられています。

先週金曜日、ピート・ヘグセス国防長官が Anthropic をサプライチェーンリスクに指定すると表明したことで、両者の対立は決定的な決裂を迎えていました。

2本のレッドラインを巡る対立

対立の火種となったのは、軍による Claude の利用権限です。Anthropic はこれまで国防総省と2億ドルの契約を結んでおり、機密ネットワーク上で機密情報を処理できる唯一の最先端 AI モデルとして運用されていました。

しかし同社は軍事利用において、米国民に対する大量監視を行わないこと、そして人間の監視を介さない完全自律型の致死兵器に組み込まないこと、という2本のレッドラインを要求しました。これに対し国防総省は、あらゆる合法的な用途での無制限アクセスを求めました。

社内リークされたアモデイ氏のメモによると、交渉の最終局面で軍は、大量取得データの分析という文言を削除するなら条件を受け入れると打診してきたといいます。アモデイ氏はこの要求こそ自社が最も懸念していた大量監視シナリオに直結しており、極めて疑わしいと警戒感を強めました。

決裂直後、ライバルの OpenAI が国防総省と迅速に契約を締結しました。アモデイ氏はメモの中で、OpenAI の動きを安全対策の形骸化だと批判し、トランプ政権への多額の献金や迎合の有無が扱いの差を生んだと指摘しています。OpenAI のグレッグ・ブロックマン社長はトランプ氏支援のスーパー PAC に2500万ドルを寄付していました。

軍が手放せない現実

本来、サプライチェーンリスクの指定は外国の敵対勢力に対する措置であり、米国の自国テック企業に適用されるのは異例です。指定されれば、国防総省と取引のあるすべての企業が Claude の利用を禁じられるため、同社にとっては死活問題となります。

しかし、困るのは軍も同じでした。報道によると、Claude はパランティアの Maven スマートシステムに組み込まれ、イランを巡る軍事作戦やベネズエラでの作戦において、実戦データの分析に不可欠なツールとして現場で広く使われています。

突如として Claude を排除すれば現場の軍事作戦が混乱することは避けられず、OpenAI のサム・アルトマン CEO でさえ、自社の契約を急ぎすぎたと認め、Anthropic への制裁指定を撤回するよう軍に呼びかける事態となりました。

なぜ重要か

今回の再交渉は、理念と事業存続の狭間で揺れる AI 企業が直面した、極めて現実的な妥協劇だと考えられます。

一般の開発者や企業ユーザーにとっても影響は甚大です。もし指定が正式発効していれば、防衛サプライチェーンに関わる無数のテック企業が Claude の利用停止やモデル移行を強いられるところでした。ひとまず対話が再開されたことで、最悪の供給断絶リスクは後退しています。

業界全体にとって見過ごせないのは、AI の安全基準を掲げることが、国家権力による排除の口実にされかねないという前例が作られかけた点です。大量監視や自律兵器への歯止めを求めた国内企業を、外国の脅威と同じ枠組みで威圧する手法は、あまりに乱暴に見えます。

Anthropic は倫理的な姿勢を崩さなかったことで開発者コミュニティからの支持を集め、アプリのダウンロード数を伸ばしました。しかし、最終的に契約交渉の妥協を探らざるを得ない現実は、どれほど巨大な AI 企業であっても政府の強権的な圧力には抗いきれない構造的な脆さを浮き彫りにしています。

情報源 (5)

  1. [1]
  2. [2]
    theverge.com(新しいタブで開きます)報道theverge.com
  3. [3]
  4. [4]
    bloomberg.com(新しいタブで開きます)報道bloomberg.com
  5. [5]
    techcrunch.com(新しいタブで開きます)報道techcrunch.com

毎日のAIピックアップ