Anthropic、カリフォルニア州のAI規制法案「SB 53」への支持を表明
Anthropicはカリフォルニア州の最先端AI規制法案「SB 53」への支持を発表した。同法案は10^26 FLOPS以上の計算力で開発された大規模モデルを対象に、安全フレームワークの公表や内部告発者保護を義務付ける一方、スタートアップは対象外とする。同社は情報開示の法制化が健全な競争に繋がると評価している。

米カリフォルニア州で議論が続く AI 規制法案を巡り、大手 AI 開発元の足並みが乱れています。2025 年 9 月 8 日、Anthropic はカリフォルニア州議会の Scott Wiener 上院議員が提出した新法案「SB 53」への正式な支持を表明しました。
シリコンバレーのベンチャーキャピタルである Andreessen Horowitz(a16z)や Y Combinator、さらには各種業界団体が法案阻止に向けて猛烈なロビー活動を展開する中での単独支持表明となり、業界内に波紋を広げています。
義務付けから「情報開示」へ舵を切った新法案
昨年に物議を醸し、Gavin Newsom 州知事の拒否権行使によって廃案となった「SB 1047」と比べ、今回の SB 53 は大幅に現実路線へ舵を切っています。モデルの設計に技術的な縛りを設けるのではなく、情報開示を義務付けるアプローチを採用しました。
規制対象は、10 の 26 乗 FLOPS 以上の計算リソースで訓練されたモデルや、総売上高が 5 億ドルを超える大手企業に絞られており、スタートアップは対象外です。法案が定める「破滅的リスク」も、50 人以上の死亡事故や 10 億ドル以上の損害をもたらす生物兵器開発支援や大規模サイバー攻撃といった極端な事例に限定されています。
対象企業は、安全対策フレームワークの策定と公開、モデル配備前のリスク評価レポートの提出、重大な事故発生から 15 日以内の州への報告、そして内部告発者の保護が法的に義務付けられます。公約を守らなかった場合は金銭的な罰則が科されます。なお、議会での審議過程において、反発の強かった第三者監査の必須条項は削除されました。
分断するシリコンバレーの思惑
反対派の急先鋒である a16z などは、AI の規制は連邦レベルで行うべきであり、州ごとの独自規制は合衆国憲法の通商条項に反する可能性があると主張しています。OpenAI も州知事に対し、イノベーションを阻害して新興企業を州外へ流出させかねない規制への懸念を伝えていました。
これに対し、Anthropic の共同創業者である Jack Clark 氏は、連邦政府による統一基準が望ましいとしつつも、ワシントンでの合意形成を待っている間にフロンティアモデルの進化は止まらないと指摘し、州レベルでの先行基準の重要性を訴えています。
かつて前法案を批判していた政策専門家の Dean Ball 氏も、SB 53 は技術的現実を尊重した抑制的な内容になっており、成立の可能性は十分に高いと評価しています。
なぜ重要か
一般的な開発者や小規模な事業者にとって、今回の法案は実質的な影響を受けない設計になっています。高い計算能力と売上基準により、スタートアップが煩雑なコンプライアンス対応で疲弊する事態は避けられそうです。
業界全体にとって大きいのは、「自主規制」の形骸化に歯止めがかかる点です。Anthropic、OpenAI、Google DeepMind などはすでに独自の安全方針を掲げていますが、あくまで自主基準に過ぎず、競争が激化すれば基準を甘くする誘惑が働きます。SB 53 が成立すれば、自ら宣言した安全基準を遵守することが法的な義務となり、違反すれば制裁金が科されます。
今回の Anthropic の動きは、「安全重視」という自社のブランドを確立しつつ、すでに実践している自社基準をライバルにも強制させる巧妙な立ち回りだと見えます。ただし、懸念材料がないわけではありません。カリフォルニア州が先行することで、他の州も独自ルールを乱立させ、全米で規制のパッチワークが生じるリスクは依然として残されています。
情報源 (2)
- anthropic.com(新しいタブで開きます)原文anthropic.com
- techcrunch.com(新しいタブで開きます)報道techcrunch.com