アメリカン航空、AIで乗り継ぎ遅延を予測:必要に応じ出発を遅らせる運用も
アメリカン航空は主要ハブ空港での乗り継ぎ失敗をAIで予測し、必要に応じて後続便の出発を意図的に遅らせて乗客を待つ運用を行っていると明かした。さらにチャットボットに生成AIを組み込み、悪天候時の代替ルート検索や予約変更をセルフサービス化している。

乗り継ぎ便の搭乗口へ走ったものの、目の前で扉が閉まってしまった経験を持つ旅行者は少なくないはずです。
米アメリカン航空(American Airlines)が、まさにこの問題を解決するためにAIの導入を進めています。同社の最高デジタル・情報責任者(CDIO)であるガネーシュ・ジャヤラム氏が社内ポッドキャストで明かしました。
乗り継ぎ客を待つために、あえて出発を遅らせる
アメリカン航空が導入したのは、主要ハブ空港で乗客が乗り継ぎに失敗するかどうかを予測するAIシステムです。
興味深いのはその後の対応です。ジャヤラム氏によると、AIの予測に基づいて一部の出発便をあえて意図的に遅らせ、前便が遅延した乗り継ぎ客の搭乗を待つ判断を下しているといいます。最終目的地への到着遅れを最小限に抑えるのが狙いです。
航空データ分析企業OAGの調査によると、米国の商業便の約4分の1が15分以上の遅延を経験しています。分単位で組まれた運航ダイヤにおいて、わずかな遅れが全体へ連鎖します。
OAGによれば、遅延原因のすべてが天候不良ではなく、30%は航空会社や空港の非効率さ、別の30%は老朽化した航空管制などのインフラ障害が原因だとされています。
IT予算を2割増額、チャットボットにも生成AIを投入
アメリカン航空はこうしたデジタル変革を支えるため、IT予算を20%引き上げ、他業界から専門家を招いて業務フローそのものを見直しました。
顧客向けには、既存のチャットボットに生成AIを組み込みました。悪天候でダイヤが乱れた際、利用者はカウンターに並ぶことなく、AIとの対話で代替ルートを見つけて再予約できます。
刷新されたモバイルアプリでは、iPhoneやApple Watchの「ライブアクティビティ」に対応し、搭乗口や搭乗時刻、座席、着陸予定時刻がリアルタイムで確認可能になりました。空港の自動チェックイン端末も刷新され、手続き時間は数分に短縮されています。
社内でも開発者がAIコーディングツールを活用してレガシーシステムの近代化を急いでいます。ジャヤラム氏は、これらの実装に先立ち、プライバシーや安全対策を担保するAIガバナンス体制の構築に時間を割いたと強調しています。
なぜ重要か
乗り継ぎ便の寸断は、旅行者にとって最もストレスのかかるトラブルの一つです。AIを駆使して自力で素早く振り替え便を取れるだけでも実用価値は高いですが、飛行機側が自分を待ってくれるとなれば体験価値は劇的に変わります。
航空会社にとっても、乗り継ぎ客を置き去りにしてホテル代や補償、別便の手配に追われるより、数分遅らせてでも乗せてしまったほうがトータルコストを抑えられる場合があります。この損得勘定をリアルタイムでAIに判断させるアプローチは、非常に合理的だと考えられます。
一方で、この運用には分かりやすいリスクも伴います。遅れてくる客を待つために機内で待たされる乗客の不満をどう抑えるか、またその遅延が次の就航地でさらなる玉突き遅延を引き起こさないかという運用上の課題です。
また、OAGのデータが示す通り、遅延の3割は外部の老朽化した航空管制インフラに起因しています。自社のAIがいかに賢くなっても、空の交通インフラ自体の目詰まりまでは解消できないという現実的な限界も残ります。
情報源 (1)
- pymnts.com(新しいタブで開きます)原文pymnts.com