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研究

コロンビア大が「EchoNext」発表:普通の心電図から隠れた心疾患を発見

公開 拡散指数 36

コロンビア大学などのチームが、通常の心電図データから隠れた構造的心疾患を検出するAIツール「EchoNext」を開発しました。診断精度は専門医の64%を上回る77%を記録。安価な通常検査を高価な心エコー検査のトリアージに活用できる道を開きます。

大腸がんには内視鏡、乳がんにはマンモグラフィがありますが、世界中で数千万人が抱える構造的心疾患には、これまで手軽で安価なスクリーニング手段が存在しませんでした。

医学教育でも長年、「心電図(ECG)だけで弁膜症や心筋症などの構造的異常は見抜けない」と教えられてきました。確定診断を下すには、専門機器による高価な心エコー検査を受けるしかありません。

この常識を覆したのが、コロンビア大学とニューヨーク・プレスビテリアン病院の研究チームです。英科学誌『Nature』に掲載された研究で、チームは日常的な心電図波形から隠れた構造的心疾患を高精度に検出するAIモデル「EchoNext」を発表しました。

専門医の64%に対し、AIは精度77%を記録

構造的心疾患は自覚症状が出にくく、心不全や弁膜の重大な損傷が起きて初めて見つかるケースが少なくありません。しかし、全員に高価な心エコー検査を受けさせるのは医療コスト的に不可能です。

EchoNextの狙いは、「最も安価な通常検査を使って、高額な精密検査が必要な患者を正確にあぶり出す」ことにあります。研究チームは患者23万人、120万組以上の心電図と心エコーの対照データを学習させ、心臓の物理的な変形がもたらす微小な電気信号の変化をAIに掴ませました。

4つの医療システムにまたがる3,200件の心電図データを使った検証では、13名の心臓専門医と直接対決を実施。医師側の診断精度が64%にとどまったのに対し、EchoNextは77%の精度を叩き出しました。従来のAI補助ツールを使った専門医と比較しても、EchoNextの優位性は揺らぎませんでした。

臨床現場で隠れた患者2,000人をあぶり出す可能性

研究チームはさらに、これまで心エコーを受けたことがない心電図受診患者約8万5,000人を対象に、実臨床での追跡調査を行いました。主治医にはAIの判定結果を知らせず、通常通りの診療を続けてもらいました。

EchoNextはそのうち約9%にあたる7,500人余りを「隠れた心疾患の高リスク群」と判定しました。その後1年間の追跡で、その高リスク患者の55%が通常診療の過程で初めての心エコーを受けました。

その結果、検査を受けた患者の約4分の3が実際に構造的心疾患と診断されました。これは、AIのスクリーニングなしで初めて心エコーを受けた通常患者と比べて2倍の陽性率です。高リスクと判定された全員がエコー検査を受けていれば、約2,000人の重篤な潜在患者が早期発見できていた計算になります。

チームはすでに匿名化データを公開しており、救急外来8施設での臨床試験も開始しています。

なぜ重要か

私たちは、EchoNextが示したアプローチを極めて合理的だと評価しています。まったく新しい検査機器を売り込むのではなく、すでに世界中で行われている既存インフラの価値を跳ね上げたからです。

心電図検査は世界で年間およそ4億件実施されています。安価で痛みがなく、町医者でも手軽に受けられるのが最大の強みです。EchoNextはこの4億件の通常検査を、追加コストほぼゼロの早期発見パイプラインへと変貌させます。一般の患者にとっても、普段の健康診断や術前検査のついでに、見落とされがちな重い心臓病のリスクを拾い上げてもらえる恩恵は計り知れません。

医療AI開発の潮流としても、専門医がじっくり見る高額なMRI画像を解析するより、安価な一般検査のスクリーニング能力を引き上げる方が社会的なインパクトは何倍も大きくなります。

ただし課題もあります。受診者の9%を高リスクと判定すれば、下流の超音波検査室に大量の再検査需要が押し寄せることになります。医療現場側がこのトリアージ結果を消化できる検査体制を整えられるかどうかが、実用化に向けた最大のハードルになりそうです。

情報源 (1)

  1. [1]
    scitechdaily.com(新しいタブで開きます)原文scitechdaily.com

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