本文へスキップ
IFAI

研究

過去のCT画像から心疾患を発見:Mass General Brighamと米退役軍人省が「AI-CAC」開発

公開 拡散指数 33

Mass General Brighamと米退役軍人省の研究チームが『NEJM AI』で「AI-CAC」を発表。肺がん検診などで撮影された通常の胸部CTから冠動脈石灰化を89.4%の精度で検出する。専用の再検査を行わずに、埋もれていた心血管リスクを早期発見できる。

過去のCT画像から心疾患を発見:Mass General Brighamと米退役軍人省が「AI-CAC」開発
画像:medicalxpress.com

肺がん検診や肺炎の疑いで胸部CTを撮ったあと、肺に異常がなければその画像データはそのまま電子カルテの奥深くに眠るのが普通です。

しかし、その画像には見落とされがちな重大な兆候が隠されていることがあります。

米国のマス・ジェネラル・ブリガム(Mass General Brigham)と退役軍人省(VA)の研究チームは、過去のルーチン胸部CT画像から冠動脈石灰化(CAC)を自動検出するAIツール「AI-CAC」を開発しました。研究結果は医学誌「NEJM AI」に掲載されています。

通常のCT画像を「心臓リスク検診」に再利用する

本来、冠動脈の石灰化を正確に測定するには、心拍に合わせて撮影する「心電図同期(心ゲート)CT」が必要です。心臓の拍動による画像のブレを抑えるためです。

しかし、日常の診療で撮影されるCTの大半は同期を行わない通常の胸部CTです。筆頭著者のRaffi Hagopian医師によると、VAのシステム内だけでも同期CTは約5万件にとどまる一方、非同期の胸部CTは何百万件も蓄積されているといいます。

研究チームは全米98カ所のVA医療センターで集められたデータでディープラーニングモデルを学習させ、8052件の画像でスクリーニング性能をテストしました。

その結果、AI-CACは石灰化が存在するかどうかを89.4%の精度で正しく判定しました。さらに、中等度リスクの目安となる「石灰化スコア100以上」の識別精度も87.3%を記録しています。

将来予測の面でも有用性が示されました。AIが「スコア400超」と判定した高リスク群は、スコアゼロの群に比べて10年全因死亡率が3.49倍高くなっていました。4人の心臓専門医が判定結果を検証したところ、AIが極めて高リスクと判定した患者の99.2%が、脂質異常症治療薬(スタチンなど)の投与対象に該当することが確認されました。

なぜ重要か

この研究の最も優れた点は、新たな検査機器を導入することもなく、患者に追加の被ばくを強いることもなく、既存の医療データから価値を引き出している点にあると考えられます。いわゆる「オポチュニスティック(便乗的)・スクリーニング」の理想形です。

患者にとっては、肺の検査を受けたついでに、将来の心筋梗塞リスクまで判明することを意味します。症状が出る前にスタチンを処方したり生活習慣を改善したりできれば、多くの急性イベントを未然に防げるはずです。医療費の抑制という観点でもメリットは小さくありません。

ただし、現時点での明確な課題は学習データが米国の退役軍人に限定されている点です。退役軍人データは一般人口に比べて高齢男性に偏る傾向があります。女性や若年層を含む一般集団で同じ精度が出るかどうかは今後の検証が必要ですが、眠っていた医療ビッグデータを予防医療に直結させるアプローチとして、非常に実用的な一歩と言えます。

情報源 (1)

  1. [1]
    medicalxpress.com(新しいタブで開きます)原文medicalxpress.com

毎日のAIピックアップ