Adobe Fireflyに新機能、自分の声真似から動画用効果音を生成可能に
AdobeはFireflyの動画生成向けに複数の新機能を提供開始した。テキスト説明とマイクによる擬音の録音から、タイミングや音量を反映した効果音を生成できる。さらに構図参照やキーフレーム切り抜きに対応し、Googleの動画モデル「Veo 3」も統合された。

生成AIが作る動画の多くは、いまも音のないサイレント映画のままです。足音や効果音を足そうとすれば、音素材サイトを何時間も探すか、編集ソフトで波形を1コマずつ合わせる必要がありました。
Adobeがこの面倒な作業にユニークな解決策を用意しました。7月17日、同社はFireflyの動画制作向けに複数の新機能を発表しました。目玉は、ユーザーが口で発した擬音を手がかりに効果音を自動生成する機能です。
口三味線でタイミングを指示、効果音を自動生成
仕組みはいたって直感的です。まずテキストで欲しい音を説明し、次にマイクに向かって自分でその音を真似て吹き込みます。
デモでは、Adobeのスタッフがジッパーを開ける音を作るために「zzzztttt」とマイクに向かって音を出しました。Fireflyはそのタイミングと音量の強弱を忠実に読み取り、狙い通りのジッパー音を生成してみせました。コンクリートを歩く足音のデモではやや不自然さも残ったものの、アイデア出しの段階であれば十分に実用的です。
この機能の狙いは声色を真似ることではなく、ユーザーが意図した音の勢いや発生タイミングを把握することにあります。画面下部にはタイムラインエディタも用意されており、映像とのズレも手軽に修正できます。
あわせて画面作りの制御機能も追加されました。「構図参照」では画像や手持ちの動画を使って構図を指示でき、「ビデオプリセット」を使えばアニメ調、白黒、ベクターアートなどのスタイルにワンクリックで固定できます。さらに「キーフレームクロップ」を使えば、最初と最後のフレームをアップロードして指定のアスペクト比を維持した動画を生成できます。
Google Veo 3の統合とプロ向けの構図制御
Adobeは4月にFireflyアプリを刷新して以降、ほぼ毎月ペースで大型アップデートを続けています。6月にサードパーティ製モデルへの対応を始めたのに続き、今回は5月のGoogle I/O 2025で披露されたGoogleの「Veo 3」を組み込みました。
Veo 3は、映像と音声を同時に生成できる数少ない動画生成モデルのひとつです。商用利用を前提とするAdobeだけに、権利面の対策も徹底されています。GoogleはAdobeユーザーのデータを今後のモデル学習に使用しないことに合意しました。
Fireflyで生成されたすべての画像や動画には、どのモデルが使われたかを示すデジタル署名が付与されます。クライアントワークで著作権侵害リスクを避けるための安全策です。Firefly製品管理担当バイスプレジデントのZeke Koch氏は、プライバシー基準に合意するベンダーであれば、今後もサードパーティ製モデルを積極的に追加していく姿勢を示しています。
なぜ重要か
動画クリエイターやSNSのショート動画制作者にとって、このアップデートはすぐに試す価値があります。絵コンテや試作の段階で「ここにジャキッと音を入れたい」と思ったとき、口で擬音を吹き込むだけでタイミングぴったりの音が手に入るため、制作の初速が劇的に上がります。
業界全体を見ても、AI動画の競争軸は単に綺麗な映像を出す段階から、音と映像の同期や演出の細かなコントロールへとシフトしています。音のない断片的なクリップだけでは、プロの制作ワークフローには組み込めないからです。
今回のAdobeの立ち回りは非常に巧みだと考えます。最先端の動画基盤モデルの開発でGoogleと真っ向から競うのではなく、Veo 3を自社ツール内に引き込みました。その上で、タイムライン編集やデジタル署名といったクリエイター目線の実用性と法務的安心感を付加価値にしています。自社開発に固執せず、ワークフローのハブとしての地位を固めようとする現実的な戦略と言えます。
情報源 (1)
- engadget.com(新しいタブで開きます)原文engadget.com