YouTube、登録者590万人超の低品質AI生成チャンネルを一斉削除
YouTubeが登録者数590万人超、総再生数12億回を誇る大手を含む複数の「AIスロップ(低品質な自動生成動画)」チャンネルを削除したことが明らかになった。同社はスパムや詐欺に関する規約違反を理由としており、CEOが掲げる低品質AIコンテンツ対策が本格化している。

粗悪な AI 動画を大量生産して数十億再生を稼ぎ出すバブルが、いよいよ終わりを迎えつつあります。
動画編集ツールの Kapwing が公開した調査によると、YouTube 上でトップクラスの人気を誇っていた複数の「AI スロップ(ゴミコンテンツ)」チャンネルが、プラットフォーム上から姿を消したことが明らかになりました。数十万規模の弱小アカウントではなく、登録者数数百万人を抱える巨大チャンネルが対象です。
登録者数500万人超の巨大AIチャンネルが次々と消滅
Kapwing の報告で筆頭に挙げられていたのが「CuentosFacianantes」というチャンネルです。低品質なドラゴンボール風の AI 生成動画を乱造し、590万人以上の登録者と累計12億回以上の再生回数を集めていましたが、現在は完全に削除されています。
リストの2位だった「Imperio de Jesus」も利用不可となりました。こちらは580万人以上の登録者を持ち、機械翻訳されたインタラクティブなクイズ動画などを大量配信していたアカウントです。
この2つにとどまらず、Kapwing が挙げたリスト内の16チャンネルが削除されるか、全動画が非公開化または消去されました。登録者200万人以上を誇り「世界一の AI 猫シネマ」を自称していた「Super Cat League」も、チャンネル自体は残っているものの動画は1本も残っていません。
YouTube の広報担当者 Boot Bullwinkle 氏は、Kapwing が指摘したチャンネルのうち11件について、スパムや詐欺、欺瞞行為に関する規約違反でアカウントを停止したと認めました。1件はパートナープログラムの参加資格を剥奪され、残りは運営者自身が改名や非公開化、削除を行ったとのことです。
公式の号令直後に始まった大掃除
今回の措置は唐突なものではありません。数週間前、YouTube の Neal Mohan CEO はユーザー向け書簡の中で AI スロップの蔓延に言及し、従来のスパムやクリックベイト対策システムを強化して「低品質な AI コンテンツの拡散を抑え込む」方針を打ち出していました。
YouTube は以前から「不真正なコンテンツ」への対策を進めており、偽の AI 映画予告編を投稿していた2つのチャンネルを削除した実績もあります。
一方で、同社のスタンスには矛盾も見え隠れします。Bullwinkle 氏は「生成 AI は単なるツールであり、高品質なものにも低品質なものにも使える」と強調。スパム規約を盾に悪質なチャンネルを排除する一方で、プラットフォームとしては Shorts での AI 活用を強く推奨し、クリエイター自身の AI アバター生成機能なども準備しています。
なぜ重要か
一般の視聴者や真面目なクリエイターにとって、低品質な AI 猫や奇妙なアニメでフィードが埋め尽くされる事態にメスが入ったのは大きな前進です。ツールで動画を自動生成して放置し、再生回数と広告収入を掠め取るようなビジネスモデルは、アカウント即凍結のリスクを抱えることになり、割に合わなくなっています。
YouTube のアプローチは、賢明であると同時に場当たり的にも映ります。「何が AI 生成か」という線引きで悩むのではなく、長年培ったスパムや欺瞞行為の枠組みをそのまま適用して機械的に処分したのは実務として手堅い判断です。
しかし、プラットフォームが抱えるジレンマは解消されていません。Shorts の視聴数を伸ばすために生成 AI ツールの利用を煽りながら、その結果生み出される低品質なゴミの山を必死に片付けるという矛盾に陥っています。さらに、今回の処分が外部企業である Kapwing のレポートによって公になった点も、後手に回っている印象を与えます。
再生時間やクリック率を最優先する推薦アルゴリズムの根底が変わらない限り、悪質な業者は手口を変えて新たなチャンネルを立ち上げ続けるはずです。YouTube が根本的な自動検知の仕組みを確立できなければ、このいたちごっこは終わりません。
情報源 (1)
- theverge.com(新しいタブで開きます)原文theverge.com