YouTube、芸能界向けにAIディープフェイク検出ツールを拡大
YouTubeは顔のディープフェイクを検知する肖像検出ツールを芸能事務所やタレント向けに拡大した。Content IDのように無断生成された顔動画を見つけ出して削除申請できる仕組みで、自身の公式チャンネルを持たない著名人でも利用できる。

生成AIの普及により、有名人の顔を勝手に使った偽広告やディープフェイクが世界中で急増しています。
YouTubeは4月21日、AIによって作られたディープフェイク動画を検出し、削除を申請できる「肖像検出(Likeness detection)」機能をエンターテインメント業界向けに拡大すると発表しました。タレント事務所やマネジメント会社、所属アーティストが利用対象となります。
チャンネルを持たない芸能人も保護
今回の機能拡大は、米大手エージェンシーのCAA、UTA、WME、Untitled Managementなどの協力を得て開発が進められました。注目すべきは、本人がYouTubeチャンネルを持っていなくてもこの保護システムに登録できる点です。
参加を希望する著名人は、身分証明書と自撮り動画を提出して本人確認を行います。システムがプラットフォーム上のAI生成コンテンツを自動スキャンし、登録された顔と一致する映像を見つけ出します。
不正なディープフェイクを発見した著名人は、プライバシー侵害としての削除要請や著作権侵害の申し立てを行うか、そのまま放置するかを選択できます。ただし、パロディや風刺として認められる動画は削除対象外となるため、すべての申請が承認されるわけではありません。
YouTubeは昨秋から一部のクリエイター向けに試験運用を開始し、今年3月には政治家やジャーナリストにも対象を広げていました。同社によると、これまでの先行テストにおいて実際に削除が要請された件数はごくわずかだったとのことです。
著作権管理「Content ID」との違い
YouTubeは本機能を、著作権侵害動画を自動検出する「Content ID」に似た仕組みだと説明しています。しかし、現時点ではContent IDのように、他人が投稿した動画から広告収益を分配してもらう機能はありません。
現在は顔の映像のみが対象ですが、YouTubeは今後、音声のディープフェイク検出にも対応する計画です。また、個人の肖像や声を無断使用から保護する米国の法案「NO FAKES Act」への支持も表明しています。
一方でハリウッドでは、大手事務所が所属タレントの生体データを保管し、将来的な商業利用に備える動きも進んでいます。悪質な偽物は消したい一方で、ファンが作った良質なAIコンテンツであれば収益化したいというタレント側の本音も見え隠れしています。
なぜ重要か
著名人にとって、知らない間に詐欺広告や虚偽動画へ顔を悪用されるリスクは日増しに高まっています。YouTubeアカウントを持たないタレントまで保護網に組み入れた今回の措置は、被害の早期発見という点で実用的な防御策といえます。
YouTubeがかつて違法アップロード対策としてContent IDを築いたのと同様に、AI時代の肖像権保護でもプラットフォーム主導の基準を作ろうとしている点は賢明に見えます。ただし、正当な風刺やパロディとの境界線をどこで引くのかという判断は、運用上の大きな火種になりそうです。
さらに踏み込めば、この仕組みが将来的に収益化機能へとつながる可能性は極めて高いと考えられます。無断使用を見つけて消すだけでなく、公認して広告費を分配する仕組みに移行すれば、ディープフェイクを巡るエンタメ業界のビジネスモデルそのものが塗り替えられるはずです。
情報源 (3)
- blog.youtube(新しいタブで開きます)原文blog.youtube
- techcrunch.com(新しいタブで開きます)報道techcrunch.com
- theverge.com(新しいタブで開きます)報道theverge.com