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YC、企業向け協調型エージェント基盤「QM」をオープンソース公開

公開 拡散指数 48

YC は複数人協調型エージェント基盤「QM」をオープンソースで公開した。従来の個人向けアシスタントと異なり、各社員に独立したメモリやサンドボックスを与えつつ、Slack やプロジェクト内で同一 Agent と共同作業できる権限分離の仕組みを提供する。

YC、企業向け協調型エージェント基盤「QM」をオープンソース公開
画像:github.com

QM は、組織内のチーム協調を前提に設計されたオープンソースのエージェント実行基盤(Agent Harness)だ。1 人のユーザーが 1 つの対話画面に向き合う従来の AI ツールと異なり、AI をチーム全員が共同で活用できる社内インフラへと拡張する。

大半の自律型エージェントは個人向けアシスタントとして作られており、そのまま組織全体に導入するとメモリの混同や権限管理の破綻を招きやすい。QM はこの問題を Scope(作用域)という概念で解決している。単一の中核エンジンを動かしながら、利用者の単位ごとに完全に隔離された領域を割り当てる。従業員一人ひとりに専用のサンドボックス、メモリ、ファイル置き場、API 認証情報、定期実行タスクが与えられる一方で、Slack チャンネルや共有プロジェクト内では同じエージェントをチーム全員で呼び出して共同作業できる。エージェントは入る部屋に応じて適切な役割と権限へ自動で切り替わる。

QM で何ができるか

QM は個人の日常業務からチーム単位のプロジェクト運用まで幅広く対応する。

個人向け機能としては、過去の送信履歴からユーザーの文体を学習し、指定したスケジュールで受信トレイを整理してラベル付けや返信下書きを作成できる。また、既存のコードリポジトリ上で動作させ、テストの実行、プルリクエストの作成、CI の監視、システムログの確認などを任せることも可能だ。

チーム協調の面では、Slack の共有チャンネルにエージェントを常駐させ、プロジェクトの進捗監視や定期報告の投稿を自動化できる。さらに社内向けの軽量 Web アプリケーションをオンデマンドで生成し、特定のメンバーにのみ公開してデータを最新に保つといった運用にも対応する。

エージェントのスキルは作用域ごとに管理され、個人が作成した処理手順を同僚に共有したり、管理者承認を経て全社展開したりできる。Git リポジトリから外部スキルパックを取り込むことも可能だ。cron、ファイル監視、Webhook 受信の仕組みを備えているため、担当者がログアウトしていてもバックグラウンド処理は継続して実行される。

アーキテクチャとセキュリティ構造

システムの中核は TypeScript と Node.js で構築されたヘッドレス構造で、HTTP サーバーには Fastify が使われている。エージェントループには Pi を採用しており、特定ベンダーに縛られず複数のモデルプロバイダーを切り替えて利用できる。データの永続化は Postgres が担い、セッション履歴、記憶データ、ジョブキューを保持する。

実行環境には作用域ごとの永続サンドボックスが用意されている。使い捨てコンテナとは異なり、インストールしたコマンドや依存関係はそのまま維持される。Web 画面は Vite と Lit で構築され、Slack との連携は Bolt プラグインを介して行われる。

セキュリティはローカル開発エージェントの設計思想を踏襲しており、エージェントは指示を出した人間の権限とクレデンシャルで動作し、すべての行動が監査ログに記録される。管理者は 3 段階のセキュリティ姿勢を選択可能だ。すべてのツール実行に人間の承認を求める Strict、社内プライベートネットワークへのアクセスを遮断する標準の Auto、承認ゲートを外す Dangerous が用意されている。どのモードであっても、破壊的な SQL や再帰的ファイル削除などを防ぐコマンド保護ポリシーは常に強制される。共有設定も標準では Isolated に保たれ、明示的な許可がない限り個人のメモリやファイルが共有チャンネルに漏れることはない。

導入と動かし方

QM は MIT ライセンスで提供されており、自社クラウド環境に配備して独自のモデルや API キーで運用する形態を基本としている。

手元で試す場合は、Node.js と Postgres を用意した上で npm から公式 CLI を実行する。組織名とデプロイ先(Fly.io または AWS)を指定すれば、インフラ設定や認証、Slack アプリの登録手順が順を追って案内される。開発用コマンドを使えば、Web 画面単体、Slack 単体、あるいは両方を組み合わせたローカル検証が即座に可能だ。

カスタマイズにあたっては、npm パッケージを直接参照して独自レイヤーのみを別管理する方法と、リポジトリ全体をフォークしてコア実装やサンドボックスイメージを直接改修する方法の両方が用意されている。自前運用を行わない組織向けには、サードパーティによるホスティング環境も案内されている。

なぜ重要か

現在のエンタープライズ AI 導入は、個人用チャットにログイン管理を付け足しただけのものか、高額でブラックボックスな商用プラットフォームの二者択一になりがちだった。QM の優れた点は、無理な管理機構を上乗せするのではなく、エンジニアになじみ深いサンドボックスと作用域の分離を用いて、プライバシー保護とチーム共有の両立を素直に実装した点にある。

技術系スタートアップや社内業務の自律化を進めたい開発チームにとって、QM は今すぐ検証してみる価値が十分にある。ベンダーロックインを避けながら自由度の高いエージェント基盤を手に入れられる点は魅力的だ。一方で、実運用にはインフラ管理やデータベース保守の知識が不可欠となるため、非エンジニア部門が単独で導入するツールというよりは、エンジニア主導で社内基盤として整えていく構成に適していると私たちは考える。

情報源 (1)

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    github.com(新しいタブで開きます)原文github.com

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