本文へスキップ
IFAI

業界動向

XQ-58A が AI 自律飛行試験に成功:数百万回のシミュレーション経て空戦課題を解決

公開 拡散指数 41

米空軍はステルス無人機「XQ-58A ヴァルキリー」が AI による自律飛行試験を完了したと発表した。数百万時間のシミュレーションで鍛えた AI が約 3 時間の飛行中に戦術的空戦課題を解決した。軍は今後も当面は人間が判断に関与する方針を維持するとしている。

画像:thedrive.com

AI が軍用機を操縦する未来は、もはや映画の話ではありません。

米空軍は 8 月 3 日、フロリダ州エグリン空軍基地において 7 月 25 日に実施されたステルス無人機「XQ-58A ヴァルキリー」の自律飛行試験が成功したと発表しました。AI/機械学習エージェントが操縦桿を握り、メキシコ湾上空の訓練空域で約 3 時間にわたって飛行し、戦術的な課題の解決に成功しました。

空軍の AI 試験運用部門を率いるタッカー・ハミルトン大佐は声明で、この飛行が多層安全フレームワークの有効性を実証したと述べています。そして、現代の空対空および空対地任務を遂行する AI エージェント開発に正式な道を開いたと強調しました。

シミュレータ内で数百万回撃墜されてから空へ

実機の戦闘機を飛ばしてニューラルネットワークを学習させるのは、米軍にとっても非現実的です。テストパイロット学校のチーフパイロットであるビル・グレイ氏は、F-16 の飛行コストは 1 時間で数万ドルに上り、実機で数百万回もの試行を重ねることは不可能だと語っています。

そこで空軍研究所は、まず高精度なシミュレーション環境で数百万時間に及ぶ仮想訓練を重ねました。テストパイロットのロス・エルダー少佐によれば、現実では数回しか遭遇しない極端な状況であっても、シミュレータを使えば 24 時間で数百万回も反復学習させることができます。

仮想空間で揉まれたアルゴリズムは、F-16D を改造した試験機「X-62A」に搭載されて 10 回の実機飛行試験を経て検証され、地上でのハードウェア接続試験をクリアした後に、ようやく XQ-58A に投入されました。この取り組みは 2019 年に始まったスカイボーグ計画など 4 年間の研究成果を引き継いでいます。

1000 機の「忠誠なる僚機」計画

今回のテストは単なる技術実証にとどまりません。米空軍が進める「協調戦闘機(CCA)」構想と、次世代航空優勢(NGAD)プログラムに直結しています。

米空軍は現在、少なくとも 1000 機以上の CCA ドローン調達を計画しています。第 6 世代 NGAD ステルス戦闘機 200 機と F-35A 300 機のそれぞれに、2 機の無人僚機をペアリングして運用する構想です。有人機が全体を指揮し、無人機が前線で索敵や交戦を担当します。

ただし軍は、どれほど自律性が高まっても、当面は判断プロセスのどこかに必ず人間が関与する「ヒューマン・イン・ザ・ループ」を維持すると重ねて強調しています。

なぜ重要か

私たちが注目すべきだと考えるのは、飛行時間そのものよりも、米軍が確立した「シミュレーション主導の軍用 AI 開発パイプライン」の合理性です。

巨額のコストがかかる実機飛行を極力減らし、高精度なデジタル空間で膨大な失敗を経験させてから、改造試験機経由で実機に降ろす仕組みを整えました。このワークフローがあれば、将来の空戦アルゴリズムはスマートフォンアプリのアップデートのように素早く更新できるようになります。

防衛産業全体にとっても、戦い方の前提が変わります。何億ドルもする有人ステルス機を単体で少数配備する時代から、安価で賢い無人機を大群で組み合わせる時代へとシフトしつつあります。中国人民解放軍も空戦分野への AI 導入を急速に進めており、自律型僚機をめぐる競争はすでに実験室を飛び出しました。

一方で最大の懸念は、人間による制御がどこまで保てるかです。ミリ秒単位で勝敗が決まる超音速の戦場で、人間の判断速度がシステムのボトルネックになるのは自明です。安全のための制約と、AI の即応速度のバランスをどう取るのか、現場の模索は続きます。

情報源 (1)

  1. [1]
    thedrive.com(新しいタブで開きます)原文thedrive.com

毎日のAIピックアップ