米軍、核指揮系統へのAI導入を検討:通信最適化を支援も発射判断は人間が維持
米空軍と宇宙軍の高官が、核指揮統制通信(NC3)システムに AI を導入する構想を語った。データの高速処理や最も安全な伝送ルートの選定に AI を活用する方針だが、核兵器の使用判断は絶対に機械に委ねず、大統領が最終決定を下す原則を強調している。
映画『ウォー・ゲーム』や『ターミネーター』では、核兵器の運用を機械に委ねることが人類滅亡の引き金として描かれてきました。しかし現実の米軍幹部らは、核指揮統制システムにAIを取り入れなければ、これからの戦いに敗北すると危機感を募らせています。
空軍・宇宙軍協会が開催した「2025 Warfare Symposium」のパネル討論で、米空軍と宇宙軍の高官らが登壇しました。焦点となったのは、米国の核抑止力の中核を担う核指揮統制・通信(NC3)アーキテクチャへのAI導入です。空軍地球規模攻撃軍団(AFGSC)のタイ・ニューマン少将は、AIの導入を検討しなければ敗北することになり、自分たちに負ける気はないと強い言葉で訴えました。
妨害電波の中から最速・安全な通信ルートを割り出す
核の意思決定において、最大の制約は時間です。米国大統領は、迫り来る核の脅威を探知してから、対応策を選定・指示するまでに数十分、場合によってはそれよりもはるかに短い時間しか与えられません。
ニューマン少将がAIの役割として強調したのは、通信の速度と安全性です。大統領などの国家指揮権(NCA)から爆撃機や大陸間弾道ミサイル、潜水艦といった攻撃部隊へ指令を伝達する際、電波は妨害を受けたり傍受されたりするリスクに晒されます。無数の通信経路の中から、どれが安全で最速かを人間のオペレーターが瞬時に判断することは不可能です。そこでAIが最適な伝送ルートを自動計算し、指令を届ける役割を果たすと見込まれています。
また、宇宙軍宇宙システム軍団のライアン・ローズ大佐は、AIを用いた予兆保全やシステム更新の計画、さらにはサイバー攻撃や敵の動向分析にもAIが有効だと指摘しました。戦略軍(STRATCOM)のアソニー・コットン大将も以前、膨大なデータをAIで処理しなければ、指令本部を引き払って黒電話の時代に戻るようなものだと語っています。
人間の関与と「赤いボタン」の絶対原則
核兵器の自動化に対する世間の不安を意識し、登壇した幹部らは「人間が必ず関与する(Human-in-the-loop)」原則を重ねて強調しました。
空軍のアンドリュー・ゲバラ中将は、兵器の使用を最終的に決断するのは常に人間であり、それは合衆国大統領であると明言しました。さらにニューマン少将は、AIは与えられたデータと同等の精度しか持たないため、データが改ざんされたり汚染されたりした場合のリスクを考慮し、人間が監視・検証する体制が不可欠であると認めています。
なぜ重要か
私たちは、米軍がAIを「意思決定を代行する司令官」ではなく、「過酷な電子戦を生き抜くための高速ルーターや保全ツール」として位置づけている点を現実的で巧みなアプローチだと見ています。核の危機において通信遅延は致命的であり、複雑化する通信網の最適化をアルゴリズムに任せる判断自体は合理的です。
一方で、通信の生死をAIに依存すること自体が新たな脆弱性を生むリスクも孕んでいます。敵対国が訓練データやセンサー情報を汚染した場合、AIが誤った通信経路を選択し、指揮系統が事実上遮断される恐れは排除できません。信頼性の検証や敵のデータ操作への対抗策がどこまで機能するかは、極めて重い課題です。
今回の議論は、核抑止という最高機密の領域でもAI活用が不可避な段階に入ったことを示しています。防衛産業にとっては、自律的な攻撃判断ではなく、過酷な条件下で確実に機能する高信頼性AI通信やデータ防護技術が、今後の開発競争の主戦場になるはずです。
情報源 (1)
- twz.com(新しいタブで開きます)原文twz.com