メリーランド大がAI救助隊を公開:ドローンが捜索、四足歩行ロボが患者を選別
メリーランド大学のRoboScoutチームがAIを活用した災害救助システムを実演した。自律ドローンが生還者を発見すると四足歩行ロボSpotが駆けつけ、大規模言語モデルで会話しながらバイタルを測定し、医療従事者のスマホへ優先度を送信する。

大規模な災害現場では、負傷者の数が救急隊員を圧倒し、誰から先に手当てすべきかを決める「トリアージ」が極めて困難な課題になります。
この問題に対し、メリーランド大学のRoboScoutチームがユニークな連携システムを開発しました。ドローンが上空から生存者を探し出し、四足歩行ロボットが地上で初期診断を行う仕組みです。
同チームは米国防高等研究計画局(DARPA)が主催する3年間のトリアージ・チャレンジに参加しており、ジョージア州ペリーでの大規模演習を経て、10月16日にメリーランド・ロボティクス・センターでその技術を公開しました。
上空のドローンが位置を特定、ロボット犬が自律問診
救助活動の第一歩はドローンの自律飛行から始まります。プロジェクトエンジニアのJosh Gauss氏らが設計したドローンが現場に急行し、負傷者の位置を特定します。今年の演習では、より難易度の高い夜間シナリオも導入されました。
発見された位置情報は、地上の救護班とロボット犬に即座に送信されます。
地上を担当するのは、ボストン・ダイナミクス社の四足歩行ロボット「Spot」をベースにしたApolloです。機体に搭載された車載AIコンピュータを使い、傷病者の元へ自律移動します。
デモでは、倒れているマネキンに近づいたApolloが「助けに来ました。サポートが必要ですか?」と声をかけ、バイタルサインをスキャンしました。
さらに機体上の大規模言語モデル(LLM)を使って対話を行い、怪我の状況をヒアリングした上で、評価データを救急隊員のスマートフォンへ直接送信します。
重傷者を発見した場合は、現場で大声を出して隊員を呼ぶ機能も備えています。責任者のDerek Paley教授によると、救急隊員は手も目も塞がっていますが耳は空いているため、音声での直接通知が極めて実用的だと現場から好評を得ているといいます。
なぜ重要か
災害時のトリアージでは、1分1秒の判断の遅れが生死を分けます。しかし、医師が自ら危険な瓦礫の中を歩き回って問診するのは、時間的にも安全面でも大きなロスです。
この取り組みの優れた点は、ロボットにいきなり高度な医療処置をさせようとせず、情報収集とトリアージという最も手数がかかる作業に特化させた点にあります。ロボット犬を移動式の生体モニター兼通信ノードとして使うことで、医師は安全な場所で重症度を把握し、即座に処置の優先順位を判断できます。
一方で課題も明確です。演習では安全のために傷病者から2メートルの距離を保って運用されており、物理的な接触や応急手当にはまだ踏み込めていません。また、騒音や粉塵が激しい実際の被災地で、音声対話AIがどこまで正確に機能するかは今後の検証が必要です。
それでも、空中ドローンと地上の対話型ロボットが連携して医療データを集約するフローは完成しつつあります。数年以内に被災地で最初のトリアージを行うのがロボットになる未来は、かなり現実味を帯びてきたと言えます。
情報源 (1)
- techxplore.com(新しいタブで開きます)原文techxplore.com