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英著作権法のAI優遇に抗議:音楽家1000人が「無音アルバム」をリリース

公開 拡散指数 42

ハンス・ジマーら音楽家1000人が無音アルバム『Is This What We Want?』を発表した。クリエイターが明示的に拒絶しない限りAI学習への無断利用を認める英政府の著作権法改正案に対する抗議で、空のスタジオの環境音を収録。12曲のタイトルを繋げると抗議メッセージになる仕組みだ。

英著作権法のAI優遇に抗議:音楽家1000人が「無音アルバム」をリリース
画像:techcrunch.com

再生ボタンを押してもメロディは一切流れてこず、静まり返ったスタジオの暗騒音と、時折かすかに聞こえる猫の足音だけが響く。故障でも前衛芸術の実験でもなく、これは抗議行動だ。

月曜日、Kate Bush、Annie Lennox、Damon Albarn、映画音楽の巨匠 Hans Zimmer などを含む1000人規模の音楽家たちが、「Is This What We Want?」と題した無音のアルバムを発表した。

収録された12曲のタイトルを上から順に繋ぎ合わせると、ある明確なメッセージが浮かび上がる。「英国政府はAI企業を利するために音楽の窃盗を合法化してはならない」という主張だ。

空っぽのスタジオと猫の足音だけが鳴るアルバム

アルバムに収められているのは楽曲ではなく、誰もいなくなった作業場や演奏会場の環境音だ。著作権法の改定が進んだ先に待つ、創作の現場の荒廃を象徴している。

参加者の一人である現代クラシック作曲家の Thomas Hewitt Jones は、自身のトラックについて、仕事中に邪魔をしてくる2匹の飼い猫がスタジオ内を歩き回る音がそのまま録音されていると明かした。

この作品は火曜日に主要音楽配信サービスで公開され、再生による収益や寄付金は慈善団体 Help Musicians へ寄付される予定だ。この取り組みを主導したのは、かつてAI作曲プラットフォーム Jukedeck を立ち上げた Ed Newton-Rex だ。

Newton-Rex は Jukedeck の買収を経て TikTok や Snap、Stability AI に在籍した経歴を持ち、現在はクリエイターの許諾を得ずに学習を行わない企業を認証する非営利団体を運営している。彼が立ち上げたライセンスなしのAI学習に反対する署名活動には、すでに4万7000人以上のクリエイターが参加しており、英国政府が新たなAI戦略を発表してからの5週間だけでも約1万人が署名したという。

「オプトアウト」という名の事実上の強制

今回の抗議の引き金となったのは、英国政府が検討している著作権法の改定案だ。AI企業を英国内に誘致するため、創作者側が明示的に拒否(オプトアウト)しない限り、ネット上にある著作物を許諾や対価の支払いなしでAIモデルの学習に利用できるようにする変更が盛り込まれている。

つまり、これまでの「使う前に許諾を取る」原則を覆し、「使われたくなければ自分で拒否し続けろ」という仕組みに変えようとしているわけだ。

だが、Newton-Rex はこの方式がアーティストにとって完全な敗北を意味すると指摘する。現状では統一されたオプトアウトの手続きが存在せず、どのデータセットに何が取り込まれたかを外部から検証する手段もない。同氏によれば、このような制度下では創作者の90パーセントから95パーセントの作品が無条件にAI企業へ引き渡されることになるという。

現場の危機感は強く、Hewitt Jones は過去の抗議活動で動いていたキーボードを港の海に投げ込んだことがあり、今後はスイスなど保護体制が手厚い地域での楽曲配信を検討していると語った。

Newton-Rex 氏によると、アーティストは何十年にもわたり知名度を得るために作品をネットへ公開するよう促されてきたが、今や行政や企業から「無償で公開していたのだから学習に使ってよい」と梯子を外されている状態だ。すでにネット上での作品公開そのものを取りやめ始めた表現者も少なくないという。

なぜ重要か

私たちは、今回の英国の動きが示す最大の問題は、データの追跡や管理責任という重荷を、交渉力のない個々のクリエイターに一方的に押し付けている点にあると考える。

現時点でオプトアウトを有効に機能させるインフラはどこにもない。どのモデルが自分の曲を読み込んだのか確認すらできない状態で拒否権だけを与えられても、それは形式上のアリバイ作りに過ぎない。拒否の申告が難しい以上、事実上の無断使用の容認と変わらないのが実情だ。

クリエイターにとって、これはインターネット上で作品を公開して活動を広げるという前提が崩れつつあることを意味する。オープンな場に作品を置くことが、そのまま無報酬で自らの競合となるモデルを育てるリスクに直結してしまうからだ。公開を控えたり、保護の厚い市場へ逃避したりする動きが出るのは自然な防衛反応と言える。

英国政府は規制緩和によってAIスタートアップの誘致を急ぎたいようだが、このアプローチは極めて危ういと見るべきだ。自国の強力な文化資産や表現者を犠牲にしてまでテクノロジー企業を優遇すれば、短期的には企業を呼べても、長期的には新しい文化の供給源そのものを枯渇させてしまう恐れがある。

情報源 (1)

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    techcrunch.com(新しいタブで開きます)原文techcrunch.com

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