Ubisoft、NPCのセリフ下書きを自動生成するAI「Ghostwriter」を発表
UbisoftはNPCの環境音やトリガー台詞の下書きを自動生成する社内AIツール「Ghostwriter」を発表した。脚本家が2択から選ぶことで好みを学習する仕組みで、反復作業を減らし本編の執筆に集中させる狙いだが、ゲーム開発者コミュニティからは反発の声も上がっている。
『アサシン クリード』や『ファークライ』のような広大なオープンワールドゲームでは、街を歩くNPCのつぶやきや戦闘時の敵の罵声といった細かなセリフが、世界のリアリティを支えています。
業界内で「バーク(barks)」と呼ばれるこうした短いセリフは、没入感には欠かせないものの、シナリオライターにとっては膨大なバリエーションを手作業で書き出さなければならない重労働でもありました。
ユービーアイソフト(Ubisoft)は、このNPCのセリフ下書きを自動生成する社内向けAIツール「Ghostwriter」を発表しました。
シナリオライターの雑務を減らすためのAI
ユービーアイソフトの発表によると、Ghostwriterは人間のライターに取って代わるものではなく、バークの初稿作成を担うことで、ライターがメインプロットの構築に集中できるようにする目的で開発されました。
ワークフローとしては、まずライターがキャラクター設定と生成したい発話やリアクションのタイプを入力します。するとGhostwriterが複数のバリエーションを生成し、ライターがそれを選んで編集します。
このツールにはペアワイズ比較(一対比較)の仕組みが組み込まれており、提示された2つの候補からライターが優れた方を選ぶことで、AIがライターの好みを学習します。何千回もの選択を積み重ねることで、より精度の高いセリフが出力される仕組みです。
開発を主導したR&DサイエンティストのBen Swanson氏によると、最終的な目標はナラティブデザイナー自身が自分の設計に合わせたAIモデルを作れるようにすることです。そのために「Ernestine」と呼ばれる専用の機械学習モデル作成支援ツールもあわせて用意されました。
一方で、この発表に対して業界内のゲーム開発者からはソーシャルメディア上で「AIではなく人間のライターに投資すべきだ」といった反発の声も上がりました。ユービーアイソフトはこれに対し、本ツールは現場のライターと協力して作られたものであり、短いセリフのバリエーション出しを補助するものに過ぎないと釈明しています。
なぜ重要か
ユービーアイソフトの今回の取り組みは、生成AIの使い道として非常に手堅く、理にかなっていると考えられます。大風呂敷を広げて「AIがストーリー全体を書く」と主張するのではなく、最も手間がかかり創造性を発揮しづらい背景のガヤ台詞にスコープを絞ったからです。
シナリオ制作の現場にとって、ゼロから似たようなセリフを何百本もひねり出す負担が減る価値は小さくありません。ペアワイズ比較によって、人間が選別した好みがそのまま次の精度向上に直結する設計も現実的です。
しかし、発表直後に開発者コミュニティから反発が起きた背景には、生成AIがクリエイティブ職の雇用を奪うのではないかという業界全体の強い警戒感があります。今は「下書きの補助」と説明されていても、経営陣が人員削減の口実に使うのではないかという懸念は根強く残ります。
大手ゲーム企業が制作パイプラインに本格的にAIを組み込み始めた象徴的な事例ですが、これがクリエイターの負担軽減になるのか、それとも単に現場の作業ペースを加速させるだけになるのか、今後の運用実績が注目されます。
情報源 (1)
- techcrunch.com(新しいタブで開きます)原文techcrunch.com