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業界動向

SunoがAI音楽指針を策定:電子透かし技術を導入し大量配信を制限へ

公開 拡散指数 60

Sunoは責任あるAI音楽活用の原則を発表しました。楽曲の不正利用やスパム配信を防ぐため、聴取体験を損なわない音声電子透かしやフィンガープリント技術を順次導入します。さらに、ストリーミングプラットフォームへの大量配信を制限する新たなダウンロード規约も近く導入する予定です。

音楽ストリーミングサービスで、聴き心地は良いもののアーティスト名に見覚えがない楽曲が増えていると感じるなら、それはAIによる大量生成トラックかもしれません。そうした楽曲による再生回数の水増しや印税詐取が問題視される中、AI音楽生成プラットフォーム大手のSunoが対策に乗り出しました。

Sunoの共同創業者兼CEOであるMikey Shulman氏は8月6日、公式ブログで「責任ある音楽の未来を築く」と題した行動原則を発表しました。透明性を高めるオーディオ電子透かし(ウォーターマーク)やフィンガープリント技術の導入に加え、ストリーミングプラットフォームへの大量配信を防ぐ新たなダウンロード制限方針を明らかにしています。

透かし技術とダウンロード規制で不正を防ぐ

Sunoが打ち出した主な施策は、追跡性の強化と悪用への制限です。

今後数週間以内に導入されるオーディオ透かしと音響フィンガープリント技術は、業界標準に準拠した仕様となっています。人間の聴覚には影響を与えずに改ざん耐性を備え、SpotifyやApple Musicなどの配信プラットフォームがSuno製楽曲を正確に識別できるよう支援します。なお、GoogleのSynthIDのような既存技術を採用するのか自社開発なのかについて、米TechCrunchがSunoに問い合わせたものの詳細は明かされませんでした。

もう一つの柱がダウンロードポリシーの改定です。Sunoはストリーミングサービスへの大量配信を抑止するため、ダウンロードに制限を設ける方針を示しました。具体的な上限は公表されていませんが、米The Vergeによると、同社は以前、ダウンロードを有料会員に限定し月ごとの回数制限を設ける案を提示していました。競合のUdioに至っては、ワーナーミュージック・グループ(WMG)との和解後に音源ダウンロード機能を完全に停止しています。

また、コミュニティガイドラインも改定され、実在の人物の声や肖像の無断使用、人を欺く意図を持った音声の生成が明確に禁止されました。プロンプトに特定のアーティスト名が含まれている場合は自動的に削除され、音楽的特徴の記述に変換されます。アップロードされる音源や歌詞の権利侵害対策には、Audible MagicやMusixmatchの著作権検知システム「Sentinel」が活用されています。

激化する法廷闘争とイメージ改善の狙い

今回の発表の背景には、音楽業界からの強烈な法的圧力があります。

Sunoは6月にシリーズDで4億ドルを調達したものの、全米レコード協会(RIAA)が主導するユニバーサルミュージックグループ(UMG)やソニーミュージックグループとの訴訟が続いています。先月下旬には、ドイツの著作権管理団体GEMAが提起した裁判で、ドイツの裁判所がSuno側の著作権侵害を認める判断を下しました。

さらに404 Mediaは、2025年11月にSunoで発生したデータ侵害を報じています。「Have I Been Pwned」によれば5500万人のユーザー情報が影響を受け、漏洩した内部情報からYouTubeやDeezer、Geniusから学習データをスクレイピングしていた実態が浮き彫りになりました。これによりマサチューセッツ州で集団訴訟も起こされています。

Sunoは対立を和らげるため、アーティストを招いたウィークリーキャンプの開催や、未契約の新人アーティストを支援する育成プログラム「Spark」による助成金提供など、クリエイターコミュニティへの融和姿勢を強調しています。

なぜ重要か

アイデア出しや個人的な楽曲制作にSunoを使っている一般ユーザーやクリエイターにとっては、普段のワークフローが大きく制限される可能性は低く、過度な心配は不要と言えます。一方で、AI曲を無差別に生成してストリーミングに流し込み、再生回数を稼いでいたスパム事業者にとっては厳しい打撃となります。

業界全体から見れば、今回の措置はSunoによる「大手レーベルへの実質的な歩み寄り」だと考えられます。野放図な配信を放置すれば、配信プラットフォーム自体からAI生成楽曲が一括排除されかねないため、自ら検出手段を差し出すことでプラットフォームとの共存を図った形です。

しかし、このアプローチで根本的な課題が解決するわけではありません。透かし技術はSunoの生成物しか追跡できず、オープンソースモデルを用いた楽曲スパムには無力です。さらに、モデルの学習段階で既存の著作権音源を無断利用したという疑惑そのものを帳消しにできるわけでもありません。Sunoの動きは倫理的な配慮というよりも、今後の巨額和解や正式なライセンス契約に向けた交渉材料作りという側面が強いと見られます。

情報源 (3)

  1. [1]
    suno.com(新しいタブで開きます)原文suno.com
  2. [2]
    techcrunch.com(新しいタブで開きます)報道techcrunch.com
  3. [3]
    theverge.com(新しいタブで開きます)報道theverge.com

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