Stability AIがSD3のライセンス改定、年商100万ドル未満なら商用利用も無料に
Stability AIはコミュニティライセンスの改定を発表した。SD3 Mediumを含むモデルについて、年間売上100万ドル未満の個人や中小企業であれば無料で商用利用可能となり、生成枚数の制限も撤廃された。あわせてSD3 Mediumの品質問題についても言及し、改善版の早期提供を約束している。

オープンソースコミュニティにおいて、これまで自由に触れていたモデルに突然厳しいライセンスの制限がかけられることほど、反発を招くものはありません。Stability AIがStable Diffusion 3 Mediumを公開した際、そのライセンス条件の厳しさと生成画像の品質問題をめぐって、クリエイターコミュニティでは大きな反発が起きていました。
こうした批判を受け、Stability AIは7月5日、新規定となる「コミュニティライセンス(Community License)」を発表し、従来のライセンス方針を全面的に見直しました。
年商100万ドル未満なら商用利用も無料に
今回の改定により、新しいコミュニティライセンスは研究目的や非商用利用だけでなく、一定規模の商用利用にも無償で開放されます。研究者、学生、教育関係者、趣味の開発者、ファインチューニングを行うクリエイターは、従来通り完全無料でモデルを利用可能です。
商用利用についても制限が大幅に緩和されました。個人クリエイターや中小企業は、年間の総売上高が100万米ドル(または現地通貨の相当額)を超えない限り、SD3 Mediumを含むモデル本体やその派生モデル、ファインチューニング版を自社の商用製品・サービスに組み込んで無料で使えます。
年商100万ドル未満の商用ユーザーに必要なのは、関心のあるモデルを回答する簡単なフォームを提出することだけで、支払いは発生しません。売上が100万ドルを超えた段階で、個別のエンタープライズライセンス契約が必要となります。
また、生成できる画像や動画などのファイル数制限も撤廃されました。違法行為や利用規約違反がない限り、Stability AIへの支払いがない場合であっても、生成物やファインチューニングモデルの削除を求められることはないと明記されています。
解剖学の崩壊を認め、数週間以内の改善版を予告
コミュニティの怒りはライセンスだけでなく、SD3 Medium自体の描画性能にも向けられていました。
Stability AIは今回の発表で、SD3 Mediumがコミュニティの高い期待に応えられなかったことを率直に認めました。社内テストではプロンプトの再現性やディテールにおいて旧来のSDXLを上回る結果が出ていたものの、一般公開後に人間のポーズの崩れや、学習データ内で出現頻度が低い単語に対する処理の破綻が相次いで指摘されていました。
同社はSD3 Mediumを「現在進行形の開発段階」と位置づけ、今後数週間以内に大幅な改善を加えた新バージョンをリリースすると表明しました。あわせて、新アーキテクチャの最適な活用方法やファインチューニングの手法についても情報を共有していく方針です。
なぜ重要か
個人のクリエイターやスタートアップにとって、今回のライセンス改定は大きな救済措置となります。前回の複雑な規約発表以降、コミュニティのファインチューナーがSD3への対応を見送り、SDXLに戻る動きが相次いでいましたが、年商100万ドルまでの商用無料化によって、法的なリスクを恐れずにモデルを組み込んだツールやサービスを試せる環境が整いました。
しかし、ライセンスを修正しただけで失われた信頼が完全に回復するわけではないと私たちは考えます。画像生成AIの分野では競合が次々と登場しており、人体構造の崩壊という致命的な品質問題はブランドイメージに深い傷を残しました。
批判に対して迅速に非を認め、寛容な無料枠を設定した判断自体は賢明に見えます。ただし、売上基準が「そのモデルを使った事業の売上」ではなく「企業全体の年間売上」で計算される点は、AI以外の本業を持つ中堅企業にとって依然として導入のハードルになり得ます。数週間後に提供される新モデルが本当に人間の体を自然に描けるようになるかどうかが、Stability AIが支持を取り戻せるかの正念場となります。
情報源 (1)
- stability.ai(新しいタブで開きます)原文stability.ai