上海AIラボが「Intern-S1-Pro」をオープンソース化:1兆パラメータの科学特化MoEモデル
上海人工知能研究所が科学研究向けマルチモーダル大モデル「Intern-S1-Pro」をオープンソース化しました。総パラメータ1兆(1T)のMoE構成ながら推論時の活性化は22Bに抑え、化学や物理、生命科学の難問や数理五輪レベルの推論に対応します。商用利用も無償開放されています。

Intern-S1-Pro は、上海人工知能研究所がオープンソース化した科学特化型のマルチモーダル基盤モデルです。総パラメータ数は 1 兆(1T)に達し、化学の逆合成解析、材料設計、生体分子解析、高度な数理推論など、最先端の科学研究を直接支援します。
何ができるのか
化学、材料、生命科学、地球科学、物理学の主要 5 分野を網羅し、100 以上の専門的なサブタスクに対応します。
知覚面では、分子の構造式や実験データチャート、リモートセンシング画像を高精度に読み取ります。推論面では、化学反応の条件推定や物性予測、タンパク質配列の生成といった実務的な研究ステップを担うことができます。
性能テストでは、国際数学オリンピック基準の IMO-Answer-Bench や物理オリンピック基準の IPhO2025 でハイレベルな解答精度を示しました。科学総合ベンチマークの SciReasoner や、動的エージェント環境を評価する Tau-2 でもオープンモデル屈指のスコアを記録しています。
アーキテクチャと実行方法
総パラメータは 1T と超巨大ですが、推論時は 512 個のエキスパートのうち 8 個のみを選択し、実質 22B のパラメータだけを活性化するスパース MoE(混合エキスパート)構成を採用しています。
また、物理現象特有の連続的な波形データを扱うため、フーリエ位置エンコーディング(FoPE)と新規の時系列エンコーダを導入しました。これにより、生体電気信号から天文学の観測波形まで、桁違いのスケール差を持つデータを単一モデルで処理できます。
大規模訓練を安定化させるため、グループ化ルーティング技術を取り入れ、ファーウェイ Ascend などの国内演算基盤と XTuner、LMDeploy フレームワークにネイティブ対応させています。
モデルコードと重みは GitHub、Hugging Face、ModelScope で公開されており、商用利用も無償で認められています。ブラウザから手軽に試せるオンラインデモ(chat.intern-ai.org.cn)も用意されています。
なぜ重要か
これまで科学分野の研究者は、高額な商用クローズド API を利用するか、性能が限られた小規模モデルを自前で作るかの二者択一を迫られていました。Intern-S1-Pro は、1T 規模の知見を持ちながら推論負荷を 22B に抑えた基盤を無償で提供します。
1T 分の重みを保管・展開するインフラは依然として必要ですが、研究機関が自前環境でオリンピックレベルの科学 AI を自由に拡張できる価値は極めて大きいと考えられます。
情報源 (1)
- shanghaiopen.org.cn(新しいタブで開きます)原文shanghaiopen.org.cn