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人気漫画家が訴えるAIの画風模倣:「魂を奪われた感覚」

公開 拡散指数 38

「Sarah's Scribbles」の作者サラ・アンダーセン氏が自身の体験を明かした。名前をプロンプトに入れるだけで、AIがわずか数秒で自身の画風を模倣した画像を生成することに危機感を表明。長年培った独自の表現から人間性が削ぎ落とされたと訴えている。

画像:nytimes.com

黒白のストライプシャツを着た不器用な女の子が、日常のささいな不安を描き出す。世界的な人気ウェブ漫画『Sarah's Scribbles』の作者、サラ・アンダーセン(Sarah Andersen)氏の名前を知らなくても、その画風に見覚えがある人は多いはずです。

しかし、この親しみやすくシンプルな画風が、今やネット上の悪意とAI技術による二重の標的になっています。

2022年12月31日付のニューヨーク・タイムズの寄稿で、アンダーセン氏は自身の作品がオルタナ右翼による改ざんに晒され、さらに現在は生成AIによってその作風を丸ごと奪われつつある現状を告白しました。

4chanの荒らしから手書きフォントの悪用へ

アンダーセン氏がウェブ漫画を始めたのは2011年、19歳の頃でした。「朝起きたくない」という誰もが抱く葛藤を描いた作品が共感を呼び、一躍人気作家となります。

しかし2016年後半、画像掲示板4chanの「/pol/」板で標的にされたことで状況は一変します。彼女が女性であり、フェミニズム的な視点を持ち、何より画風がシンプルで改変しやすかったことが理由でした。

ネット上の荒らしは彼女の漫画を改変し、ハーケンクロイツやホロコーストを肯定する過激なヘイトメッセージを埋め込みました。さらには彼女の手書き文字からフォントまで勝手に作成され、ネット上に拡散されたのです。

当時、アンダーセン氏はなんとか作家生命を守り抜くことができました。差別画像を一つ作るにも、人間が手作業で編集する手間と時間がかかっていたためです。

プロンプトに名前を入れるだけで複製される作風

風向きが完全に変わったのは2022年10月でした。あるファンからTwitter経由で、AIが生成したイラストが送られてきたのです。

そのファンは、画像生成AIのプロンプトに彼女の名前を入力しただけでした。生成された画像は完璧ではないものの、筆致や輪郭など彼女のスタイルそのものでした。

アンダーセン氏は強い精神的苦痛を感じたと述べています。ストライプの服は幼少期に愛読した『カルビンとホッブス』へのオマージュであり、描線の一つひとつに彼女自身の人生や選択が込められていたからです。

人間が模倣する場合でも筆圧や微妙なタッチに個性が残りますが、AIは人間性を完全に消去し、わずか数秒で大量の模倣画像を吐き出してしまいます。

なぜ重要か

クリエイターにとって、これは単なる著作権侵害の議論にとどまらず、自らの表現者としてのアイデンティティを根底から揺るがす深刻な問題です。自分の名前がプロンプトとして消費され、本人の意図とは無関係に作風が大量複製される世界では、長年かけて築いた信頼や作家性が一瞬で毀損されかねません。

AI業界全体にとっても、現行の大規模データセット収集が抱える倫理的欠陥を浮き彫りにしています。現役アーティストの作品を許諾なく学習データに取り込み、その名前をトリガーにして模倣品を生成させる仕組みは、社会的な反発を免れません。

私たちは、このままクリエイター側の権利保護やオプトアウトの仕組みを整えなければ、AI技術そのものへの不信感が決定的なものになると考えます。創作の源泉である生身の人間の尊厳を軽視した技術革新は、いずれエコシステム自体を痩せ細らせることになるはずです。

情報源 (1)

  1. [1]
    nytimes.com(新しいタブで開きます)原文nytimes.com

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