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業界動向

Sabiが思考で文字入力できるニット帽型BCIを発表、頭部手術は不要に

公開 拡散指数 43

米スタートアップ Sabi が被るだけで思考をテキスト化できる非侵入型ブレイン・コンピュータ・インタフェースを発表した。最大 10 万個の微小センサーと AI 基盤モデルを組み合わせ、考えるだけで毎分約 30 語を入力できる仕様を目指す。年内の製品提供を予定している。

Sabiが思考で文字入力できるニット帽型BCIを発表、頭部手術は不要に
画像:wired.com

タイプライターから続くキーボードの歴史は、すでに150年におよびます。これを刷新すべく、イーロン・マスク率いるNeuralinkは頭蓋骨に穴を開けてチップを埋め込む道を選びました。しかし、シリコンバレーの新たなスタートアップは、ニット帽を被るだけで十分だと考えています。

ステルス状態を脱した米スタートアップ Sabi は、頭部手術を一切必要としないニット帽型のブレイン・コンピュータ・インタフェース(BCI)を公開しました。CEO の Rahul Chhabra 氏によると、最初の製品となるニット帽型端末は年内の提供開始を目指しており、ベースボールキャップ型の開発も進めています。

OpenAI の初期投資家としても知られる Vinod Khosla 氏率いる Khosla Ventures も Sabi に出資しています。Khosla 氏は、何億人もの一般ユーザーが思考でコンピュータを操作する日常を実現するには、手術を伴わないウェアラブル端末こそが唯一の現実解だと語っています。

最大10万個のセンサーを高密度実装する

従来の非侵入型 BCI は、頭皮に電極を当てて微弱な脳電位を拾う脳波(EEG)計測に頼ってきました。しかし皮膚や頭骨に遮られるため信号が減衰しやすく、これまでは画面上のカーソルを動かすような単純な指示にとどまるのが通例でした。

Sabi はこの課題に対し、センサー数の圧倒的な物量作戦で挑んでいます。一般的な EEG 機器が数十から数百個のセンサーで構成されているのに対し、Sabi の帽子には 7 万から 10 万個もの極小センサーが織り込まれています。高密度のセンシングによって、声に出さない「内面の言葉」を読み取ろうという試みです。

さらに同社は、思考時の脳波の個人差を吸収するため、独自の「脳基盤モデル」を構築しています。ボランティア 100 人から集めた延べ 10 万時間の脳活動データを AI に学習させ、事前の個別調整なしでも思考パターンを解析できる汎用性を目指しています。

初期の入力速度は毎分約 30 語を目標に掲げています。これは一般的なキーボード打鍵速度よりは遅いものの、ユーザーが使い続けるにつれて認識精度と速度は向上していくと Chhabra 氏は説明します。

日常使いへのハードルとプライバシー保護

実用化に向けては、技術以外の生活面での課題も山積しています。

サンフランシスコの独立系神経技術コンサルタント JoJo Platt 氏は、一般消費者向けデバイスとして成立させるには「箱から出してすぐに使える簡便さ」が不可欠だと指摘します。疲労や集中度によって脳波は日ごとに変動するため、多くの研究用 BCI は使用前のキャリブレーションを必要としますが、一般ユーザーがそれに付き合うはずはありません。

見た目の自然さも重要な要素です。仰々しいヘッドギアではなく、ごく普通のニット帽やキャップの形状を採用したのも、日常に溶け込ませるための工夫です。

また、心の中で考えた言葉が読み取られることへのプライバシー不安に対して、Sabi は端末からクラウドに送られるデータをエンドツーエンドで暗号化し、AI の学習も暗号化されたデータのまま実行する仕組みを採用していると説明します。さらにスタンフォード大学の専門家らと連携し、セキュリティ体制の監査を進めています。

なぜ重要か

私たちは、Sabi の挑戦がウェアラブル市場とブレインテックの境界を塗り替える分岐点になると見ています。

手術を前提とする侵入型 BCI は医療用途で圧倒的な成果を上げていますが、健常者向けの巨大市場には届きません。Sabi のアプローチが賢いのは、信号の弱さをセンサーの集積度と基盤モデルの力技で補うことで、一般人が心理的抵抗なく手に取れるフォームファクタに落とし込んだ点です。

毎分 30 語という速度は、手作業のキーボード入力と比べればまだ遅いものの、満員電車の中での返信や、誰にも聞かれずにメモを取る作業、あるいは身体障がいを持つ方の意思疎通ツールとしては十分実用的な水準です。

ただし、夏場の着用や髪の毛による接触不良、汗や皮脂によるセンサーの劣化、洗濯の手間など、布製品と精密電子機器を融合させる上での現実的なハードルは依然として残っています。年内に予定される製品がこれらの物理的な壁をどこまでクリアできているか、冷静に見極める必要があります。

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