リモート労働指数:AIのフリーランス業務遂行率が1年で6倍に、Fable 5が首位
AI安全センター(CAIS)とScale Labsが「リモート労働指数」の最新結果を公表した。3D設計など実際の業務課題に対し、AnthropicのFable 5が15.8%の完全自動化率を記録しトップに立った。1年足らずで能力は約6倍に向上したものの、現行モデルが単独完遂できるのは6件中1件にとどまり、人間の介入が不可欠である現状を示している。

AIによる雇用の代替はまだ先の話だと思っているなら、その認識は改める必要があるかもしれない。ただし、完全な置き換えが明日起きるわけでもない。
AI安全センター(CAIS)とScale Labsが「リモート労働指数(Remote Labor Index、RLI)」の最新ベンチマーク結果を公開した。学術的なテスト問題ではなく、3D宝飾品デザインやアニメーション広告制作、建築の間取り図作成、データ分析など、実際に報酬が発生する240件のフリーランス案件をAIエージェントに課し、プロの納品物と比較して人間の審査員が合否を判定する仕組みだ。
結果として、AIの完全自動化率は1年足らずで約6倍に急伸した。しかし同時に、最先端モデルであっても業務を単独完遂できるのは「6件に1件」にとどまるという現実も浮き彫りになっている。
Fable 5が首位独走、2位にダブルスコア
RLIが2025年10月に初めて発表された際、首位だったGPT-5.2の完全自動化率はわずか2.5%にすぎなかった。その後、Opus 4.6が4.17%を記録したものの、一桁台前半での停滞が続いていた。
今回の最新評価でトップに立ったのは、AnthropicのFable 5だ。達成した完全自動化率は15.8%(一部集計では16.1%)に達し、2位となったOpus 4.8の8.3%にほぼダブルスコアの差をつけた。OpenAIのGPT-5.5は6.3%で3位につけている。
評価環境も実践的だ。AnthropicモデルはClaude Code、OpenAIモデルはCodex CLIをベースに、スクリーンショット取得とクリック・入力が可能なコンピュータ操作ツールを組み込んだ。BlenderやFreeCAD、GIMP、LibreOfficeなど30種類以上の専門ソフトが揃ったLinux仮想環境を渡し、人間と同じようにUIを操作してファイルを納品させている。
AI審査員を導入したら評価が水増しされた理由
今回のレポートで興味深いのが、人間の審査コストを削減するために開発された「AI裁判官」の失敗談だ。
過去モデルで基準を厳密に調整したAI裁判官を新世代モデルの評価に投入したところ、スコアのインフレが発生した。GPT-5.5に対して約3倍、Opus 4.8に対して約2.5倍も能力を過大評価してしまったのだ。
原因は明快で、成果物を正しく評価すること自体が高度なエージェント業務だからだ。プロのクライアントは3Dソフトを開き、モデルのワイヤーフレームや構造破綻がないかを実際に操作して確かめる。だがソフトウェアを自律操作できないAI裁判官は、表面的な見た目だけで合格を出してしまった。OpenAIのGDPvalでも指摘されている通り、自動評価は業界の専門家による人間の目視を代替できないことが改めて証明された。
なぜ重要か
私たちは、このベンチマークがAIによる労働代替の議論に対して、きわめて地に足の着いた基準を示したと考えている。
フリーランスやクリエイターにとって、目下の危機は「職を失うこと」ではなく「協業の遅れ」だ。トップのFable 5ですら約84%の案件では商業水準に達していない。すべてを丸投げすれば破綻するが、初期ドラフトの作成やデータの下準備にAIを組み込めば、個人の生産性は飛躍的に跳ね上がる。最終的な品質担保とディレクションを人間が握る前提で、ツールとして使い倒すのが賢い選択肢と言える。
業界全体で見れば、単なるテキスト対話から「OSや専門ソフトを自ら操作するエージェント」への移行が確実に成果を上げている。1年足らずで2.5%から15.8%への跳ね上がりは、技術的進化のスピードが衰えていない証拠だ。
また、CAISとScale LabsがAI審査員の自己採点リスクを暴いた点も評価できる。数字のインフレに惑わされず、実際のビジネス現場で通用するかどうかを検証し続けることが、今後のAI開発における最大の防波堤になるはずだ。
情報源 (1)
- safe.ai(新しいタブで開きます)原文safe.ai