クアルコムがSnapdragon Wear Elite発表:AIピン向け、端末側で20億パラメータ駆動
クアルコムはAIピンやペンダントなどのウェアラブル端末向けに3nmチップ「Snapdragon Wear Elite」を発表した。Hexagon NPUにより端末上で20億パラメータ規模のモデルを毎秒最大10トークンで実行できるほか、GPS消費電力を40%削減し、Linuxにも対応して独自ハードウェアの開発を支援する。

初期のAIピンやペンダント型デバイスは散々な評判を受けましたが、クアルコムはこの市場を諦めるつもりはないようです。同社は、ウェアラブルAIガジェットをターゲットにした新プロセッサ「Snapdragon Wear Elite」を発表しました。
報道関係者向けの説明会で、同社はEliteを「リスト・プラス(手首の先)」と位置づけました。従来のスマートウォッチ向けチップである「W5 Plus」を置き換えるものではなく、ピンバッジやペンダント、ディスプレイを持たないスマートグラスなど、新たなフォームファクターと並行して展開されます。
3nmプロセスと2つのNPUで端末内推論を強化
Eliteは最先端の3nmプロセスルールを採用し、AI処理のために2つのNPUを搭載しています。
低消費電力の「eNPU」は、キーワード認識やアクティビティ検知など、常時動作が必要な軽量タスクを担当します。一方、高負荷な処理を担う「Hexagon NPU」は、最大20億パラメータのモデルを端末上で直接動かし、1秒あたり最大10トークンを生成できるとされています。簡単な対話や判断なら、毎回クラウドに送る必要がありません。
CPU性能は前世代比で約5倍に向上し、GPUはフルHD(1080p)解像度で60fpsのアニメーション描画をサポートします。OS面では、AndroidやWear OSに加えてLinuxもサポートしており、独自OSを開発するスタートアップにも門戸を開いています。
課題のバッテリーと接続性をテコ入れ
ウェアラブル機器にとって最大の弱点だったバッテリー寿命も改善されています。
メインチップの電力効率が見直され、GPSトラッキングの消費電力は40パーセント削減されました。高精度な日常利用の指標とは言えないものの、全体としての利用日数も30パーセント延びるとされています。急速充電面では9V充電に対応し、約10分間で50パーセントのバッテリーを充電可能です。
通信機能も大幅に強化されました。5GやBluetooth 6.0、UWB(超広帯域無線)に加えて、衛星通信にも対応しています。
なぜ重要か
これまでのAIハードウェアが熱暴走や極端な電池持ちの悪さに悩まされたのは、既存の時計用や旧型スマホ用チップを無理に使っていたことが一因でした。クアルコムが3nmやデュアルNPU、Linux対応を揃えた専用チップを用意したことで、開発側のハードウェア的な足かせは大幅に軽減されます。既存のAIピン製品に失望したユーザーも、この世代のチップを積んだ後続機が出るまでは購入を待つ価値がありそうです。
業界全体で見ても、ポスト・スマートフォンの覇権争いは確実に進んでいます。GoogleがAIウェアラブルのエコシステム構築を進め、Appleの参入の噂や、ジョニー・アイブ氏とサム・アルトマン氏による新ハードウェアの構想が浮上するなか、クアルコムは真っ先にその標準プラットフォームを握りにいきました。
もっとも、端末上で動く20億パラメータ・毎秒10トークンというスペックは、日常の補助的な応答には十分でも、複雑なタスクには依然としてクラウドとの連携が不可欠です。チップの進化によって「身につけても熱くなく、すぐ充電できる」環境は整いそうですが、そもそも首からAIをぶら下げる必然性があるのかというソフトウェアと体験の根本的な問いは、まだ解決されていません。
情報源 (1)
- theverge.com(新しいタブで開きます)原文theverge.com