PSI、未公開のAnthropicモデルを用いて量子計算の未解決予想を証明
Physical Superintelligence(PSI)は、未公開のAnthropicモデルと定理証明支援系Leanを用いた独自研究システムにより、2008年から未解決だった「アーロンソン・アンバイニス予想」を3日で証明したと発表した。量子コンピュータが無作為なランダムデータに対して指数関数的な高速化を達成できないことが数学的に確定し、量子優位性の明確な限界が示された。

量子コンピュータはどんな計算でも瞬時に終わらせる万能のマシンだ、という過剰な期待に、AIが一つの明確な限界線を引きました。
Physical Superintelligence(PSI)は、未公開のAnthropicモデルと自社の計算インフラを用いた研究システムにより、2008年から未解決だった「アーロンソン・アンバイニス予想(Aaronson-Ambainis conjecture)」を完全に証明したと発表しました。システム稼働からわずか3日目に証明を導き出し、対話型定理証明支援系Leanによる厳密な検証もパスしました。
長年数学者たちを悩ませてきたこの予想は、今や確定した数学の定理となりました。
量子アクセラレーションの限界を確定
この問題の本質は、量子コンピュータが本当にいつでも通常のマシンを圧倒できるのか、という問いにあります。
1994年に発見された有名なショアのアルゴリズムは、巨大な数の素因数分解において圧倒的な高速化を示しました。しかしこれは、データの中に隠された規則的なパターンを利用しているからこそ成り立つ仕組みです。
では、そうしたパターンが一切存在しない完全にランダムなデータを相手にした場合、量子コンピュータは依然として指数関数的な高速化を達成できるのでしょうか。
スコット・アーロンソン氏とアンドリス・アンバイニス氏は、この問題を多項式の数学的性質へと落とし込みました。もし彼らの予想が正しければ、通常のコンピュータでもごく少数のビットを調べるだけで量子計算の挙動を模倣でき、指数関数的な差は生まれないことになります。
今年8月にはスタンフォード大学の研究チームが限定的な条件下での証明を発表していましたが、今回のPSIのシステムは全容の完全証明に到達しました。スタンフォード大のチームもこの結果を精査し、複数の数学分野が見事な形で結びついた巨大な成果だとコメントを寄せています。
背後にある謎のモデルとAIによる自律推論
今回の研究を主導したのはPSIのDavid Turturean氏です。彼は研究システムを構築して課題を設定し、モデルに論文の初稿を執筆させました。
業界内で特に大きな話題を呼んでいるのが、システムを動かした未公開のAnthropicモデルの存在です。コミュニティや一部報道では、これが開発中の「Model 4」ではないかと推測されています。折しも第三者評価機関METRの調査において、Anthropic社内での研究開発速度が前年比で倍増しており、その大半がAI自身の関与によるものだという分析が出たばかりでした。
具体的なモデル名はどうあれ、未解決の難問をわずか3日で解き、Leanによる形式的検証まで完結させたという事実は極めて強烈です。
なぜ重要か
今回の成果には、量子計算の現実的な境界線の確定と、基礎科学におけるAIの役割の変化という二重の意義があると私たちは考えています。
まず量子コンピューティングにとって、これは冷や水であると同時に極めて健全な道標です。何でも速くなるという過剰なバブルを数学の壁で押し戻し、入力に特別な構造を持たない問題では通常のマシンに対して指数関数的な優位性を持てないことが確定しました。これにより、業界は実質的な高速化が見込めるアルゴリズムの開発へリソースを集中できるようになります。
そしてAIの進化という観点では、AIが純粋数学の最前線で通用する証明者になり得ることを実証しました。モデルが持つ発想の飛躍をLeanのような厳密な検証系と組み合わせることで、ハルシネーションを排除しながら人間の数学者が18年間足踏みしていた難問を突破してみせました。
AIを単なるリサーチのアシスタントとしてではなく、未知の定理を切り拓くパートナーとして組み込めるかどうかが、今後の科学研究における決定的な差になっていくと見られます。
情報源 (1)
- psi.inc(新しいタブで開きます)原文psi.inc