ベクトルDBのPineconeが1億ドル調達、評価額7.5億ドルに
ベクトル検索エンジンを提供するPineconeが、Andreessen Horowitz主導のシリーズBで1億ドルを調達し、評価額は7.5億ドルに達した。LLMの「長期記憶」として需要が急増しており、Auto-GPTなどの普及期には1日1万件の登録があったという。

大規模言語モデル(LLM)向けのベクトルデータベースを手がける米スタートアップの Pinecone は、シリーズ B で 1 億ドルを調達したと発表した。評価額は 7 億 5,000 万ドルに達し、Andreessen Horowitz(a16z)がリード投資家を務めた。
GPT-4 などの基底モデルが超高速な頭脳だとすれば、ベクトルデータベースはその外付けハードディスクのような存在だ。
ChatGPT と自律型エージェントの爆発的普及が追い風に
Pinecone は 2021 年に設立された。創業者の Edo Liberty 氏は元 Amazon AI Labs のトップを務めた人物だ。同社が提供するのは、機械学習モデルが生成する埋め込み(Embedding)データを高速かつスケーラブルに検索できるマネージドサービスである。
昨秋の ChatGPT 登場以降、モデルの「幻覚(ハルシネーション)」を抑え、社内データを安全に参照させる手段としてベクトル検索が一気に脚光を浴びた。2023 年に入り、Zapier や Gong といった企業が有料顧客として次々に導入を決めている。
さらに直近では、Auto-GPT や BabyAGI といった自律型 AI エージェントのブームが勢いを加速させた。どちらのプロジェクトも長期記憶層として Pinecone を採用しており、Liberty 氏によれば一時期は 1 日あたり 1 万件のサインアップを記録したという。
競合の台頭と「200 万トークン」を巡る議論
市場が熱を帯びる一方で、ライバルや技術的な課題も浮上している。市場には Chroma や Weaviate、Milvus など有力な競合がひしめく。
また今週、ネット上では「Recurrent Memory Transformer(RMT)」という新アーキテクチャの論文が話題を呼んだ。最大 200 万トークンの情報を保持できるとされ、モデル自体が長文を記憶できればベクトルデータベースは不要になるのではないかという議論が巻き起こった。
これに対し、RMT は推論時間が長大で実用的ではないとの指摘もある。Pinecone のマーケティング担当バイスプレジデントである Greg Kogan 氏は、研究室で動く技術と、コストや性能、運用負荷が問われる実用規模のアプリケーションとの間には大きな溝があると反論している。
なぜ重要か
開発者にとって、Pinecone のようなマネージド型のベクトルデータベースは、社内ナレッジを活用したチャットボットや AI エージェントを最短で本番投入するための強力な道具だ。インフラ運用の手間をかけずに RAG(検索拡張生成)を構築したいなら、現在最も堅実な選択肢の一つと言える。
業界全体で見れば、a16z による 1 億ドルの出資は、ベクトルデータベースが一時的な流行ではなく、AI ソフトウェアスタックの不可欠な一層として定着したことを示している。モデル自体のコンテキスト長が広がっても、コストと推論速度の観点から外部記憶の需要は当面消えないとみられる。
もっとも、Pinecone が安泰とは言い切れない。手軽なフルマネージドという強みで先行したものの、オープンソース勢の進化や、既存の汎用リレーショナルデータベースによるベクトル対応が猛追している。特化型データベースとしての付加価値をどこまで高められるかが、今後の正念場になりそうだ。
情報源 (1)
- venturebeat.com(新しいタブで開きます)原文venturebeat.com