NBCユニバーサル、PeacockにAI縦型動画機能:アバター案内やNBAリアルタイム変換
NBCユニバーサルは動画配信サービス「Peacock」アプリに導入するAI機能を発表した。今夏提供の「Your Bravoverse」では、アンディ・コーエン氏のAIアバターが5000時間以上の番組からパーソナライズされた縦型動画を案内する。今春にはAIで生中継を9:16の縦型にリアルタイム変換するNBA配信のテストも開始する。

過去のドラマやバラエティのアーカイブを活かす際、多くの動画配信サービスは特集を組むかハイライトを並べる程度にとどまっていました。しかしNBCUniversalは、数千時間に及ぶ自社ライブラリとAIを組み合わせ、無限にスワイプできる縦型動画体験へと作り変えようとしています。
NBCUniversalは3月13日、動画配信サービス「Peacock」のモバイルアプリに導入する複数の新機能を発表しました。目玉となるのは今夏登場予定の「Your Bravoverse」です。Synthesiaの技術を活用して人気司会者Andy Cohen氏のデジタルアバターを生成し、5000時間以上のBravo番組映像からAIがパーソナライズされた縦型プレイリストを構築します。その組み合わせパターンは6000億通り以上にのぼります。さらに今春には、NBAの生中継をAIでリアルタイムに9:16へと切り抜いて配信する試みや、「Law & Order」などを題材にしたモバイルゲームも順次展開します。
5000時間の番組から6000億通りのプレイリストを自動生成
Peacockはこの縦型動画機能を重視しており、モバイルアプリ下部ナビゲーションの「ダウンロード」ボタンを置き換える形で、専用の縦型動画タブを新設します。なおダウンロード機能はユーザープロフィール内に移動します。
Your Bravoverseでは、コンピュータビジョンによるシーン抽出やファン心理を学習したAIエージェントを活用し、シーズンをまたいだ複雑な人間関係やハイライトを自動で紡ぎ出します。Cohen氏のデジタル分身は専用スタジオで収録された本人の映像や音声を基に作られ、プレイリストの案内役を務めます。ハルシネーションなどを防ぐため、最終的な出力結果は人間の編集チームがチェックする体制をとっています。
この背景には、熱狂的なファンダムの存在があります。公式データによると、Bravoの熱心な視聴者は月に最大75エピソードを消費し、他ジャンルの番組も通常ユーザーより92%多く視聴しています。デジタルアバターはパーソナライズ動画の中でスポンサー企業に言及するなど、新たな広告枠としても活用される予定です。
NBA生中継をAIがリアルタイムで縦型化
バラエティだけでなく、スポーツ中継にもAIが導入されます。今春Peacockは、Courtside Live機能の中でNBA中継をAIがリアルタイムに9:16比率へ最適化して配信するベータ版を開始します。配信アプリが生中継全体を縦型で提供するのは業界初となります。
2026年ミラノ・コルティナ冬季五輪での実績によると、縦型ハイライトを見たユーザーの20%がそのまま本編の生中継へ遷移したほか、モバイルでのマルチ画面機能の利用率はテレビ視聴者の2倍に達しました。
さらに、Wolf Gamesの生成AIエンジンを採用した「Law & Order: Clue Hunter」や「Jeopardy!」のクイズゲームなど、アプリ内から直接遊べるミニゲームも今春から順次追加されます。
なぜ重要か
この施策は、TikTokなどの縦型短尺動画プラットフォームに可処分時間を奪われている配信サービス側からの、極めて実利的な対抗策だと私たちは考えています。
ユーザー側から見ると、膨大すぎてどこから見ればいいか分からない長寿番組を、AIが文脈ごとに切り出して届けてくれるため、視聴のハードルが劇的に下がります。一方で懸念もあります。熱心なファンほど番組の細部に強いこだわりを持つため、デジタルアバターの語り口に少しでも不自然さがあれば敬遠されるリスクがあります。また、NBA中継のリアルタイム縦型切り抜きも、ボール周辺に寄るあまり全体の戦術やコートの広がりが見えにくくなるトレードオフを抱えています。
業界全体にとって、今回の試みは過去の膨大なアーカイブ資産を生成AIで再構築する新たなマネタイズの道筋を示しています。もしこのアプローチが視聴維持率の向上に直結すれば、競合他社も自社の名物タレントをデジタル化し、自前の縦型フィードに組み込む動きが一気に加速しそうです。
情報源 (1)
- nbcuniversal.com(新しいタブで開きます)原文nbcuniversal.com