Odysseyが世界モデル「Odyssey-2 Max」を発表、物理ベンチマークで首位
Odysseyは、リアルタイムで物理シミュレーションが可能な世界モデル「Odyssey-2 Max」を発表しました。前世代比でサイズを3倍に拡大し、VBench 2の物理スコアで首位を獲得しています。従来の動画生成と異なり自己回帰型で次の状態を予測する仕組みで、現在は限定ベータ版として提供されています。

SoraやVeo、Runwayが生成する映像を見れば、AIが現実世界をリアルに再現できているように思えるかもしれません。しかし、画面内の車をキーボードで曲げようとしても、何も起きません。従来の動画生成モデルは固定されたプロンプトから過去・現在・未来を一度に生成するため、リアルタイムな操作に応じることは原理的に不可能です。
Odysseyは同社として最大かつ最も強力な汎用世界モデル「Odyssey-2 Max」を発表しました。前世代のPro版と比べてパラメータ数を3倍、学習計算量を10倍に拡大し、動画の物理的妥当性を測るベンチマーク「VBench 2」の物理評価で最高スコア58.52を記録しました。しかも、この推論をリアルタイムなインタラクションの中で実行できます。
映像を描くのではなく、物理法則を学ぶ
Odysseyは、双方向型の動画生成モデルと世界モデルを明確に区別しています。事前に未来まで含めて同時に生成する仕組みでは、ユーザーがまだ行っていない操作を反映できません。
世界モデルが採用するのは、言語モデルの「次の単語予測」に似た「次の状態予測(next-state prediction)」です。過去の状態とユーザーのリアルタイムな操作を入力として受け取り、因果関係に沿って一歩ずつ未来の状態を自律的に予測していきます。
120秒以上の長いシミュレーションを破綻なく続けるためには、モデル自体が重力や衝突、素材の硬さといった物理法則を内部で正しく理解していなければなりません。Odyssey-2 MaxはVBench 2の物理評価で前世代の49.67から58.52へと大きく伸ばし、NVIDIAのCosmos-Predictなどを上回るスコアを示しました。
B200クラスターと低遅延設計
高精度な物理演算をリアルタイムで回すため、アーキテクチャには自己回帰拡散トランスフォーマー(AR DiT)を採用しています。
独自のKVキャッシュにより、従来比で最大20倍長いコンテキストを完全な逆伝播を保ったまま処理できるようになりました。さらに、離散トークンではなく連続的な潜在空間でのフロー・マッチングを導入し、数ステップのデノイズで描画を完結させる蒸留技術によって、リアルタイム性を確保しています。
学習には数百台規模のNVIDIA Blackwell(B200)GPUを使用し、基礎的な映像ダイナミクスの学習、操作シグナルへの応答学習、長時間推論時の安定化という3段階のパイプラインで鍛え上げられました。
なぜ重要か
ロボティクスやゲーム開発にとって、この技術は極めて切実な課題を解決する可能性を秘めています。
ロボットや自律エージェントの訓練において、現実世界での実験はコストが高く、従来の物理シミュレータは環境の多様性に限界がありました。リアルタイムで物理的に正しい世界をAI自身が生成・対話できるようになれば、ニューラル空間内での自律訓練が大幅に加速します。現在、Odyssey-2 Maxはロボット工学やゲーム、シミュレーション分野のパートナー向けに限定ベータ版として提供されています。
業界全体で見れば、物理シミュレーションにおいてもスケール則(モデルと計算量の拡大)が通用することを実証した点が大きいです。単なる映像の美しさを競うフェーズから、操作可能で物理法則に従う環境を構築するフェーズへと主戦場が移りつつあります。
ただし、課題も残されています。Odyssey自身も、現在の状態を「運転免許を取る直前の人間」、あるいは言語モデルにおける「ChatGPT前夜のGPT-2」に例えています。物理的な直感は獲得したものの、産業用の厳密なエンジニアリング検証に使える水準まではまだ誤差の蓄積という壁があります。それでも、受動的な映像生成を脱し、対話可能な物理知能へと踏み出した意義は小さくありません。
情報源 (1)
- odyssey.ml(新しいタブで開きます)原文odyssey.ml