Odyssey、物理世界モデル「Odyssey-3」発表 単一モデルでロボットから自動運転まで制御
Odysseyは汎用物理知能を目指す基盤世界モデル「Odyssey-3」を発表した。事前学習で物理法則や因果関係を獲得しており、数十時間のデータでアームや人型ロボット、ドローン、さらには自動運転やゲームまで単一モデルで制御可能にする。ハードウェアごとに個別開発する時代からの大きな転換点となりそうだ。

これまでロボットや自動運転の開発では、ハードウェアやタスクごとに専用のAIモデルを一から学習させるのが当たり前でした。ロボットアーム、人型ロボット、自動運転車、ドローン。それぞれに膨大な専用データを集める必要があり、莫大なコストと時間がかかっていたのが実情です。
Odysseyはこの常識を覆す基盤世界モデル「Odyssey-3」を発表しました。単一のAIモデルで、あらゆる物理システムの頭脳を担うことを目指した野心的な試みです。
物理法則を学んでから、操作を覚える
Odyssey-3のコアは自己回帰型の拡散トランスフォーマー(autoregressive diffusion transformer)です。最初からロボットの動かし方を学習するのではなく、まず大量の映像データを通じて、物体の運動、重力、因果関係、人間の行動といった現実世界の物理ルールを徹底的に学びます。
世界そのものを理解させた後、巨大な世界モデル本体は凍結し、外部に「アクションデコーダー」と呼ばれる小さな制御モジュールを取り付けます。これにより、わずか数十時間の制御データを追加するだけで、特定のハードウェアを動かせるようになります。
その汎用性は驚くべき水準に達しています。ロボットアームの実験では、数十時間のデモデータだけで、掴み損ねた際に自らグリッパーの向きを変えたり、変な位置に落ちた物体を拾い直したりといった、教示データに含まれていないリカバリー動作を自発的に見せました。
人型ロボットの領域ではロボティクス企業Flexionと共同開発を実施。数十時間の遠隔操作データをもとにリアルタイムで作業をこなす制御ポリシーを構築しました。FlexionのCEOであるNikita Rudin氏によると、従来のVLAベースラインが失敗するような急激な照明変化の下でも、Odyssey-3ベースのシステムは安定して作業を継続できたといいます。
さらに自動運転では、わずか20時間のシミュレーションデータを与えただけで、交通が極めて混雑するインドの公道でリアルタイムの閉ループ自律走行を実現しました。シミュレーションのみで学習したモデルが、実走行映像で訓練したモデルに対して約77%の走行距離(人間の介入なし)を維持しています。
ドローンの屋内障害物回避から、ゲームのプレイまで対応します。『GTA V』のプレイ映像で学習したポリシーが、追加学習なしで『レッド・デッド・リデンプション2』の馬の操作や『スリーピングドッグス』のバイク運転に適応できるなど、仮想空間と現実空間の垣根を越えた転移能力も示しました。
なぜ重要か
私たちは、Odyssey-3がロボット開発の「データの壁」を突破する有力なアプローチになると考えています。
これまでの身体性AI(Embodied AI)は、人間による遠隔操作などの高価なデータを集める人海戦術に頼らざるを得ませんでした。しかし、Odysseyのアプローチは、まず動画から物理法則を学ばせ、わずかな追加データで行動に変換します。これが確立されれば、ロボット開発のコスト構造は激変します。
特に中小のロボットメーカーや研究チームにとって、自前で数千時間のデータを集めることなく、既製の世界モデルの上に自社ハード向けのデコーダーを乗せるだけで高精度な制御が可能になる道が開けます。
もちろん懸念もあります。動画予測から導き出す世界理解と、ミリ秒単位の精密なトルク制御や極限状態での安全性担保には依然としてギャップがあります。産業用の精密組み立てや高速走行時の安全基準を満たせるかはこれからの検証が必要です。
それでも、ハードウェアごとにバラバラだったロボット知能を1つの汎用モデルに統合する流れは、確実に加速し始めています。
情報源 (1)
- odyssey.systems(新しいタブで開きます)原文odyssey.systems