ニューヨーク市が初の包括的AI行動計画を発表、行政チャットボットも導入
ニューヨーク市は米主要都市として初となる「人工知能行動計画」を発表した。行政サービスの向上とバイアスなどのリスク管理に向け37項目の施策を掲げ、事業者向け支援ポータル「MyCity」にAIチャットボットも導入した。

役所の窓口や電話対応でたらい回しにされた経験は、誰にでもあるはずです。ニューヨーク市のエリック・アダムス市長に言わせれば、簡単な質問をするために役所に電話するくらいなら、針のむしろに寝たほうがましだと感じる市民も少なくありません。
ニューヨーク市は月曜日、全米の主要都市として初となる包括的な「人工知能アクションプラン」を発表しました。全51ページに及ぶこの計画は、AIの乱用を恐れて導入を避けるのではなく、明確なガバナンスの枠組みを作った上で責任を持って行政サービスに活用していく方針を示しています。
お役所仕事を崩すAIチャットボット
アダムス市長は発表の場で、AIと聞くと映画のターミネーターのように機械が行政を乗っ取るのではないかと不安視する声に対し、深呼吸して現実を見てほしいと語りました。目的は人間の代替ではなく、都市機能の向上にあります。
この計画の一環として、市は事業主向けポータルサイト「MyCity Business」上でAIチャットボットのベータ版を公開しました。マイクロソフトのAzure AIサービスを活用し、2000件以上の公的ビジネス関連Webページや記事のデータを学習させたもので、起業や事業拡大に必要な手続きの案内を担います。市は今年3月にも、育児支援サービスへのアクセスを支援するMyCityの初期版を立ち上げていました。
さらに市長は、長蛇の列になりがちな翻訳サービスの待機時間を減らすため、自身の音声を多言語で再現したAI音声による自動電話連絡の試験運用も開始したと明かしています。
今回のアクションプランには37の重点項目が盛り込まれており、そのうち29項目は今後1年以内に着手または完了する予定です。具体的には、市当局の担当者で構成する「AI運営委員会」の立ち上げ、外部有識者による諮問ネットワークの構築、市職員へのAI教育、年次進捗報告書の公表などが含まれています。
すでに動いている30以上のアルゴリズム
実際には、行政現場でのアルゴリズム活用は今に始まった話ではありません。
ニューヨーク市ではすでに十数の機関が30を超えるアルゴリズムツールを運用しています。犯罪パターンの分析、学校の入学者選考のマッチング、産後うつや母乳育児に関する支援の割り当て、さらには地下鉄の一部駅における運賃不正乗車の傾向監視にまで使われています。
しかし、警察や住宅などの分野で利用されるデータには偏見が反映されやすく、有色人種や女性に対する差別に繋がる懸念があります。今回の計画では、各機関がこうしたバイアスやリスクを評価し、ツールの有効性を検証するための手順を整備することも明記されました。ニューヨーク大学のステファン・バーハルスト研究教授はブルームバーグに対し、市の財政が逼迫する中で、AIは少ない人員で大量のデータから意思決定を行うのに役立ち、特に手頃な価格の住宅需要が高い地域を特定する上で有用だと指摘しています。
なぜ重要か
市民や中小企業経営者にとって、複雑怪奇な行政ルールを自然言語で案内してくれる窓口の存在は、時間と労力を大幅に削減する実利があります。多言語対応のAI音声連絡も含め、行政アクセスの敷居を下げる試みは、すぐに試す価値がある取り組みと言えます。
公共セクター全体にとっても、ニューヨークが全米の大都市に先駆けて全庁的なAI方針を明文化した影響は小さくありません。各部署が水面下で個別にツールを導入して後から問題化するのを防ぎ、統一基準と進捗報告を義務付けた動きは、他都市が追随せざるを得ない前例となります。
今回の手法は、まず利用価値が分かりやすいビジネス支援ポータルで実績を作りつつ、管理体制を敷くという点で極めて現実的だと私たちは考えます。一方で、ビジネス案内での誤回答なら再確認で済みますが、すでに運用されている警察の犯罪予測や学校選考、福祉支援の割り当てといったアルゴリズムの選別基準は市民生活を直接左右します。委員会を作って報告書を出すだけでなく、過去データに染み付いた差別や偏見をどこまで技術的・制度的に排除できるかが、今後の本当の試金石になりそうです。
情報源 (4)
- businessinsider.com(新しいタブで開きます)原文businessinsider.com
- ktvz.com(新しいタブで開きます)報道ktvz.com
- us.cnn.com(新しいタブで開きます)報道us.cnn.com
- cnn.com(新しいタブで開きます)報道cnn.com