OracleとNVIDIAが「Zettascale10」発表:16ゼタフロップスで数百万基のGPUを接続
OracleはNVIDIA GPUを搭載した新たな計算クラスタ「OCI Zettascale10」を発表した。最大16ゼタフロップスのAI演算性能を誇り、Spectrum-X Ethernetで数百万基規模のGPUを接続する。さらにOracle Database 26aiやOCIコンソールへNVIDIA製AIツールのネイティブ統合も進める。

最先端の大規模言語モデルを用意しても、企業の基幹データがレガシーなデータベースに眠ったままでは実力を発揮できません。
年次イベント「Oracle AI World」にて、NVIDIA と Oracle はエンタープライズ AI およびデータ処理の加速に向けた協業拡大を発表しました。インフラの計算能力の引き上げだけでなく、データベース内部での検索やパイプライン処理の効率化に踏み込んでいます。
16 ゼタフロップスの新クラスタと GPU によるベクトル検索の高速化
今回の発表でインフラ規模の象徴となっているのが、新しい「OCI Zettascale10」クラスタです。
NVIDIA の次世代 GPU を搭載し、AI の学習および推論ワークロード向けに最大 16 ゼタフロップスのピーク性能を発揮します。ネットワークには AI 向けに設計された「NVIDIA Spectrum-X」イーサネットを採用し、数百万規模の GPU を相互接続する数ギガワット級の容量を備えています。
一方、実務上のインパクトが大きいのはデータベース側の機能強化です。
オラクルの最新フラッグシップ「Oracle Database 26ai」は「NVIDIA NeMo Retriever」API との統合に対応しました。開発者は「NVIDIA NIM」マイクロサービスを利用し、埋め込みモデルの実行や RAG パイプラインをデータベース環境内で直接構築できます。
さらに「Oracle Private AI Services Container」では、オープンソースの「NVIDIA cuVS」ライブラリを活用した GPU によるベクトル埋め込みとインデックス生成の高速化に対応します。データ量が増加するにつれて深刻化していた近似最近傍探索インデックスの構築時間を大幅に短縮可能です。
コード変更なしの Spark 高速化と管理機能の統合
データ処理基盤の「Oracle AI Data Platform」には、「NVIDIA RAPIDS Accelerator for Apache Spark」プラグインが組み込まれました。
「NVIDIA cuDF」ライブラリと Spark の分散フレームワークを組み合わせることで、既存のコードを変更することなく、ETL や機械学習パイプラインを GPU で加速できます。
業務向けソリューションでも連携が進んでいます。Oracle Media and Entertainment では、動画のデコードやセグメンテーションの前処理を自動化するために「NeMo Curator」と「Nemotron」VLM を採用しました。また、複雑な文書から構造を保持したまま情報を抽出するため「NeMo Retriever Parse」が導入されています。
運用面では、「NVIDIA AI Enterprise」が OCI コンソールにネイティブ統合されました。マーケットプレイスで別途調達手続きを行うことなく、インスタンス起動時に直接有効化でき、パブリックリージョンだけでなくソブリンクラウドや専用リージョンでも利用可能です。会場では NVIDIA に 2025 年のパートナー賞が授与されました。
なぜ重要か
Oracle データベース上に大量の業務資産を抱える企業にとって、今回の連携は RAG 導入のハードルを一段引き下げる価値があります。外部のベクトル専用データベースへデータを移行することなく、既存のデータ基盤とコンテナ内で索引生成から検索まで完結できるためです。
既存のコードを書き換えることなく Apache Spark を GPU 加速できる点も、日々の ETL 処理の遅延に悩むエンジニアにとって極めて実用的と言えます。
業界全体で見れば、クラウド基盤の競争軸が単純な GPU インスタンスの貸出から、業務データと連携したパイプラインの総合力へ移行していることを示しています。Oracle は自社の強みであるミッションクリティカルなデータ基盤を守り、NVIDIA は自社のソフトウェアスタックを企業の最もコアなシステムへ浸透させることができます。
地味ながら時間のかかるインデックス作成やデータ整形といったボトルネックを解消するアプローチは、現場目線で見ても賢い手筋だと考えられます。ただし、NIM や cuVS への依存度が高まるほど、他社クラウドや異なるハードウェア環境への移行は極めて困難になるというロックインのリスクは注視しておく必要があります。
情報源 (1)
- blogs.nvidia.com(新しいタブで開きます)原文blogs.nvidia.com