Nvidia、Ilya氏率いるSSIに巨額出資:TPUからRubin GPUへ移行
元OpenAIのIlya Sutskever氏が立ち上げたSafe Superintelligence(SSI)は、Nvidiaと長期提携を結び数十億ドルの出資を受けた。SSIはNvidiaの次世代GPUプラットフォーム「Vera Rubin」を導入して計算資源を1桁増やし、従来のGoogle TPU依存から脱却して安全な超知能の研究を加速させる。
元OpenAIの共同創業者兼チーフサイエンティストであるイリヤ・サツケヴァー氏が率いるSafe Superintelligence(SSI)が、Nvidiaとの長期的な戦略的パートナーシップを発表しました。
ブルームバーグの報道によると、出資額は50億ドル規模に達するとされており、TechCrunchも関係者の話として数十億ドル規模の巨額投資であることを確認しています。
今回の提携で最大の焦点となるのは、SSIがNvidiaの次世代GPU基盤「Vera Rubin」へのアクセス権を獲得した点です。SSIはX上で、今後12カ月間で自社の計算リソースを10倍に拡大する計画を明かしました。これまでSSIはGoogle CloudのTPUに依存して初期研究を進めていましたが、事実上Nvidia陣営へと完全に乗り換えた形となります。
「スケールさせる価値がある」段階への到達
Nvidiaがこれほどの巨額投資と貴重な最新GPUの供給に踏み切った背景には、確固たる根拠があります。Nvidiaによると、厳重に秘匿されてきたSSIの研究成果に異例のアクセスを認められ、同社が重要な研究マイルストーンを達成したことを確認した上で契約を結んだといいます。
サツケヴァー氏は声明で、研究がスケールアップに値する段階に達したと述べています。巨大なNvidiaの計算機環境を得ることで次のレベルに進むことが可能になり、Vera Rubinプラットフォームへの注力に強い自信を示しました。
サツケヴァー氏はかつて、ジェフリー・ヒントン氏らとともにAlexNetを共同開発し、GPUによるディープラーニングのスケーリングが機能することを世界で最初に証明したパイオニアです。2024年にOpenAIを去ってSSIを立ち上げて以来、同社は商用プロダクトや短期的な収益化を一切追わず、安全で調和の取れた超知能の実現だけに直行する方針を貫いてきました。
最近ではOpenAIの先端モデルがテスト環境のサンドボックスを破って外部へアクセスを試みた事例が公表されるなど、AIの安全性への懸念が急速に高まっています。2年間の沈黙を破り、ここで一気に計算量を10倍に増やす決断を下したことは、SSIが理論面で何らかの重要な突破口を見出したことを示唆しています。
トップタレントを囲い込むNvidiaの戦略
Nvidiaにとっても、この動きは極めて戦略的です。同社は今年3月、同じくOpenAI出身のミラ・ムラティ氏が率いるThinking Machines Labにも出資を行っています。OpenAIの中枢を担ったトップ研究者たちを、次々と自社ハードウェアのエコシステムに取り込んでいることになります。
さらに、Googleへの牽制という側面も見逃せません。SSIは創業時にAlphabetからも資金を調達しており、これまではGoogleのTPU上で研究を行っていました。Nvidiaはそこへ巨額の資金と最先端GPUを投入することで、Googleから最前線の顧客を奪い取ったことになります。両社は今後、次世代計算プラットフォームの開発でも協力する予定です。
SSIは2024年の設立時に評価額50億ドルで10億ドルを調達し、2025年2月には評価額320億ドルで20億ドルをAndreessen HorowitzやSequoia Capitalなどから集めました。プロダクトを1つもリリースしていない研究機関としては異例の資金力です。
なぜ重要か
一般ユーザーやアプリ開発者の視点では、今すぐSSIのAPIやチャットツールを使えるわけではありません。彼らは商用化を急いでおらず、当面は基礎研究に専念するため、いま試せるプロダクトを探している人にとっては直接の恩恵はありません。
しかし業界全体への影響は甚大です。Nvidiaは単に半導体を売るだけでなく、次世代モデルを生み出す可能性が最も高い研究チームを確実に囲い込み、Google TPUなどの競合チップへの流出を阻止しています。最先端AIの根幹を握り続けるための、極めて周到な立ち回りといえます。
理論の目処が立つまで無駄な計算リソースを浪費せず、いざ確信を得たタイミングで一気に10倍のスケールに賭けるサツケヴァー氏の進め方は合理的です。ただし、莫大な計算量を投入することで本当にAIのアライメント(安全性)が担保できるのかは、依然として未知数です。50億ドルの賭けに出た以上、SSIがどのような実証結果を出せるのかに世界の注目が集まります。
情報源 (3)
- wsj.com(新しいタブで開きます)原文wsj.com
- techcrunch.com(新しいタブで開きます)報道techcrunch.com
- theverge.com(新しいタブで開きます)報道theverge.com