NVIDIAら、最長4年先の血糖値を予測する生成AI「GluFormer」を開発
NVIDIA とワイツマン科学研究所、Pheno.AI は、過去の血糖測定データから将来の血糖値や最長 4 年後の健康状態を予測する生成 AI「GluFormer」を発表した。食事ごとの血糖値変動も予測可能で、糖尿病の早期予防への貢献が期待される。

甘いクッキーを前にして、これを食べたら自分の血糖値がどう跳ね上がるのか気になる人は多いはずです。その答えを、文章を生成するのと同じAIモデルが予測してくれる時代が来ました。
NVIDIA、ワイツマン科学研究所、イスラエルのスタートアップPheno.AIの共同研究チームは、生成AIモデル「GluFormer」を発表しました。持続血糖測定(CGM)デバイスから得られる過去のデータをもとに、将来の血糖値や関連する健康リスクを最長4年先まで予測できるモデルです。
血糖値データを「文章」のように読む
GluFormerの基盤には、ChatGPTなどと同じTransformerアーキテクチャが採用されています。テキスト生成では先行する単語列から次の単語を予測しますが、このモデルではテキストの代わりに血糖値の推移データを扱います。
NVIDIAのAIリサーチ担当シニアディレクター、ガル・チェチック氏は、医療データやCGMの記録を生体プロセスの連続的な検査シーケンスとみなすことができると述べています。長大な文章を扱えるTransformerを使うことで、前後の検査結果の流れから生体指標が時間とともにどう変化するかをモデル自身が学習します。
GluFormerの学習には、Pheno.AIが主導する「Human Phenotype Project」で収集された、糖尿病を持たない被験者1万人超のデータが使われました。ウェアラブル端末を使い、14日間にわたって15分間隔で血糖値を計測した膨大な時系列データです。計算基盤にはNVIDIAのTensor Core GPUクラスターが用いられました。
さらに食事内容のデータを組み合わせることで、特定の食品を食べたり食事制限を行ったりした際に血糖値がどう反応するかを予測できるようになり、個々人に合わせた精密栄養指導への道が開かれました。
血糖値にとどまらない予測範囲
興味深いのは、その高い汎化性能です。健康な人のデータだけで学習させたにもかかわらず、研究チームが別の15のデータセットで検証したところ、糖尿病予備群、1型および2型糖尿病、妊娠糖尿病、肥満の人々の健康状態に対しても高い予測精度を示しました。
さらに、GluFormerが予測できるのは血糖値の波形だけではありません。論文の筆頭著者であるNVIDIAの研究員ガイ・ラツカー氏によると、肝臓や膵臓の周囲につく内臓脂肪量、高血圧や糖尿病リスクに関わる収縮期血圧、さらには2型糖尿病と関係の深い睡眠時無呼吸症候群の重症度を示すAHI指数まで推定できます。
ハーバード・ヘルス・パブリッシングやニューヨーク大学ランゴン・ヘルスも指摘するように、CGMデータは糖尿病の早期診断に有用です。GluFormerはこれを一歩進め、過去の記録から数年先の合併症リスクまで察知するツールへと進化させました。
なぜ重要か
糖尿病は現在、世界中の成人のおよそ10パーセントが罹患しており、2050年までに患者数は13億人へと倍増する可能性があるとされています。2030年までに世界的な経済的影響は2兆5000億ドルに達する見込みです。ウェアラブル端末を2週間着けるだけで、自分がどんな食事に注意すべきか、数年後にどんなリスクがあるかを可視化できるなら、予防医療の実効性は劇的に上がります。
業界全体にとって、これは生成AIの主戦場がテキストや画像から「生体時系列シグナル」へと拡張されたことを意味します。これまでスマートウォッチやパッチ型センサーは過去の数値をグラフ表示するだけにとどまっていましたが、予測モデルが組み合わさることで、ハードウェアの価値が根本から変わる可能性があります。
私たちとしては、高価な遺伝子解析や複雑なカルテデータではなく、ウェアラブルで容易に集まる15分刻みの時系列データに着眼した点が非常に巧みだと評価しています。ただし、4年先という長期予測はあくまで統計的な推計にすぎず、生活習慣の激変や予期せぬ疾患を完全に織り込むことは困難です。ユーザーが過度な不安を抱いたり自己判断で極端な食事制限に走ったりするリスクには配慮が必要ですが、LLMの技術を生体モニタリングに応用した好例と言えます。
情報源 (1)
- blogs.nvidia.com(新しいタブで開きます)原文blogs.nvidia.com