NVIDIA、創薬向け生成AI「BioNeMo」をAWSで提供開始
NVIDIAはAWS re:Inventにて、創薬向け生成AIプラットフォーム「BioNeMo」をAWS上で提供開始したと発表した。Amazon SageMakerなどを介して利用でき、最大512基のH100 GPUを用いてタンパク質モデルの学習期間を1か月から数日に短縮できる。製薬企業は自社データを使った基盤モデルの構築をクラウド上で迅速に行えるようになる。

バイオインフォマティクスの大規模モデルを動かすには、これまで自社で高価なクラスタを構築するか、クラウド上で煩雑なインフラ設定に追われるのが常でした。
AWS re:Invent において、NVIDIA は創薬向け生成 AI プラットフォーム「BioNeMo」を Amazon Web Services 上で利用可能にすると発表しました。製薬企業やバイオテックの開発者は、Amazon SageMaker や AWS ParallelCluster、そして今後対応予定の AWS 上の NVIDIA DGX Cloud を通じて、NVIDIA Clara のヘルスケア向けソフトウェア群を展開できるようになります。
512 基の H100 で学習期間を1か月から数日に短縮
BioNeMo は、標的探索、タンパク質構造予測、創薬候補のスクリーニングを高速化するためのデジタルバイオロジー特化型フレームワークです。事前学習済み大規模言語モデル(LLM)や最適化された学習パイプラインがパッケージ化されています。
なかでも目を引くのが、タンパク質構造予測モデル「ESM-2」の処理能力です。NVIDIA によると、256 基の NVIDIA H100 GPU 上でほぼ線形のスケーリングを達成し、512 基の H100 に拡張した場合は、元の論文で 1 か月かかっていた学習をわずか数日で完了できるとしています。
開発者は 6 億 5,000 万パラメータや 30 億パラメータのチェックポイントを使って開発を進められます。このほか、低分子生成モデルの MegaMolBART やタンパク質配列生成モデルの ProtT5 もサポートされており、LabGenius や Basecamp Research などの新興企業がすでに活用しています。
医療画像フレームワークの MONAI が累計 180 万回以上ダウンロードされている実績や、全ゲノム変異解析を CPU の丸 1 日から約 15 分に縮める Parabricks など、既存のヘルスケア基盤も AWS 上でさらに統合が進みます。
なぜ重要か
小規模なバイオベンチャーにとって、今回の統合はインフラ構築のハードルを劇的に下げる現実的な一手だと考えられます。
数千億規模の分子データを扱う分散学習には、本来なら高度なインフラエンジニアが必要です。BioNeMo が SageMaker など使い慣れた環境で動くようになれば、計算科学者が自前でクラスタの保守にリソースを割くことなく、自社データを用いたファインチューニングに集中できます。
業界全体から見れば、NVIDIA がライフサイエンス分野における計算スタックの標準化をさらに強固にした格好です。単なるハードウェア提供にとどまらず、モデルの最適化手法ごと自社エコシステムに抱き込む戦略が功を奏しています。
ただし、計算機上の検証(イン・シリコ)がどれだけ数日に短縮されたとしても、実際のウェットラボでの検証や臨床試験の壁が消えるわけではありません。候補物質の探索効率は桁違いに上がりますが、それがそのまま新薬承認の成功率に結びつくかは、今後の治験結果を慎重に見極める必要があります。
情報源 (1)
- blogs.nvidia.com(新しいタブで開きます)原文blogs.nvidia.com