NY州、家賃のAI価格カルテルを禁止 全米初の州法成立
ニューヨーク州は、家主がアルゴリズムソフトを使って家賃を協調設定することを禁止する法案を成立させた。全米初の州規模の規制で、RealPageなどのソフトを利用して賃料を決める行為自体が価格談合と見なされる。新法は60日後に施行される。

アパートを借りる際、周辺の物件の家賃が一斉に引き上げられ、値引き交渉の余地が一切ないと感じた経験はないでしょうか。
その背景には、アルゴリズムによる価格調整がありました。ニューヨーク州のキャシー・ホークル知事は木曜日、家主が家賃設定に価格操作ソフトを使用することを禁止する法案に署名し、同法が成立しました。自治体レベルではジャージーシティ、フィラデルフィア、サンフランシスコ、シアトルなどで規制例がありましたが、州単位での全面禁止は全米でニューヨーク州が初めてです。
新法は60日後に施行されます。
アルゴリズム利用=談合とみなす新法
RealPageなどのソフトウェア企業は、家主に対して最適な賃料を設定するアルゴリズムを提供してきました。このソフトは家賃だけでなく、住戸ごとの理想的な居住人数や契約更新時の条件まで算出します。
RealPage側は、賃料と入居率の組み合わせを最適化して収益を最大化できるとアピールしていました。しかしホークル知事は、競合他社の非公開データを集約して処理するアルゴリズムが、歴史的な住宅供給不足と価格高騰の危機の中で市場を歪め、借主を苦しめていると指摘しました。
今回の法律で特筆すべきは、法的責任の追及方法です。ソフトを使って賃貸条件を設定することを禁じるだけでなく、ソフトを利用した複数の不動産所有者は「談合」を行っていると法的にみなされる点です。
つまり、2人以上の家主が同じアルゴリズムで家賃を決めた場合、故意か過失かを問わず、互いに競争しないことを選択したと判断されます。ソフトウェアの単純な利用を超えて、反トラスト法違反の枠組みで厳しく問われることになります。
借主への被害は年間38億ドル
価格設定アルゴリズムが与えた影響は甚大です。ホークル知事の発表によると、この種のソフトウェアによる米国の賃借人の負担増は、2024年だけで約38億ドルに達したとされています。
この問題は、2022年に調査報道機関ProPublicaがRealPageのアルゴリズムと全米の賃料高騰の関連を報じたことで注目を集めました。その2年後の2024年には、米連邦政府がRealPageを提訴しています。
法案の提案者であるブラッド・ホイルマン=シガル州上院議員は、AIによる家賃操作が違法であることを明確にし、反トラスト法を現代化するものだと説明しています。また米経済自由プロジェクトのパット・ガロファロ氏も、アルゴリズムによる価格カルテルから住民を守る動きとして歓迎しています。
なぜ重要か
ニューヨーク州の賃借人にとって、この法律は直接的な保護につながります。これまで家主はアルゴリズムの指示を盾に値下げ交渉を拒否してきましたが、今後は個別に市場の需給を見極めて価格を決める必要が生じ、借り手側の交渉余地が戻ってくる可能性があります。
業界全体にとって、今回の動きはAIやデータ活用に対する独占禁止法適用の大きな転換点となります。従来の法規では、人間同士が裏で連絡を取り合った証拠が必要でした。しかし、共通のアルゴリズムに非公開データを集約すること自体を談合と定義したことで、立証のハードルが一気に下がりました。
この手法は、アルゴリズムのブラックボックス性に惑わされず、市場の寡占という結果に焦点を当てており、非常に理にかなった規制アプローチだと考えられます。他州も同様の法制化に追随する可能性が高いでしょう。ただし、根本的な住宅供給不足が解消されるわけではないため、今後はより検知しにくいデータ分析ツールへの移行など、規制と業界の駆け引きが続くことになりそうです。
情報源 (1)
- theverge.com(新しいタブで開きます)原文theverge.com