NearがクロスチェーンAIアシスタントを発表:ミームコイン発行から航空券予約まで
Near ProtocolはクロスチェーンAIエージェント「NEAR.AI Assistant」のアルファ版を公開した。指示一つでミームコインを即座に生成・発行できるほか、チェーン抽象化技術でビットコインやイーサリアム間の資産交換に対応する。今後はWeb2サイトでの航空券予約や出前注文への対応も予定している。

現在のAIアシスタントの多くは調べ物や文章作成といった「言葉」の領域にとどまっています。しかし、AIに暗号資産ウォレットの権限を渡し、ブロックチェーン上でトークンを発行させたり、現実世界の航空券や出前を手配させたりできたらどうでしょうか。
バンコクで開催されたカンファレンス「Redacted」にて、Near ProtocolはクロスチェーンAIエージェント「NEAR.AI Assistant」のアルファ版を発表しました。かつてTransformer論文の共同執筆者の一人でもあった同社共同創業者のイリヤ・ポロスヒン氏が登壇し、実際の挙動を披露しました。
数秒でミームコインを発行、Web2連携も視野に
壇上のデモでポロスヒン氏が指示を出すと、わずか数秒でカエルをテーマにしたミームコインが完成しました。AIは背景設定のストーリーを書き上げ、ロゴを描き、ウェブサイトのUIを仕立てて、Near版のトークン発行プラットフォームへ即座にデプロイしてみせました。
さらにアシスタントは、オリジナルTシャツを印刷できる業者をウェブ上で探し出し、モックアップ画面を瞬時に構築する柔軟さも見せました。
一方で、多くの一般ユーザーが期待する航空券の予約やフードデリバリー機能は、まだ実用段階にはありません。ポロスヒン氏によると航空券予約機能は試作段階であり、今回のアルファ版には含まれていないとのことです。ただし基盤自体はオープンであるため、外部の開発者が新たなエージェント機能を追加すれば、全ユーザーのアシスタントへ即座に反映される仕組みになっています。
チェーン抽象化と「AIエージェント同士の取引」
AIが異なるブロックチェーンを跨いで支払いを行える背景には、Nearが注力する「チェーン抽象化」技術、すなわちテスト提供中のNear Intentsがあります。
これまでのクロスチェーン取引のようなブリッジや中間トークンを介さず、Nearのスマートコントラクトがチェーン署名を通じて直接通信します。現在はビットコイン、イーサリアム、Arbitrum、Base、Near間のネイティブ資産交換に対応しています。Aurora Labs創業者のアレックス・シェフチェンコ氏が行ったデモでは、MetaMaskを繋ぎ、USDTからUSDCへ、さらにビットコインへとスムーズに交換されました。年内にはSolanaやTONが加わり、今後はDogecoinやXRPへの対応も予定されています。
さらに興味深いのは、AIエージェント同士が業務を委託し合う構想です。シェフチェンコ氏は、自分のAIが銀行口座の開設方法を知らない場合、ネットワーク上の別のアシスタントを探し出して報酬と規約を決め、自動で暗号資産決済を行う未来を提示しました。Web2決済の裏側では、Peanut TradeなどのマーケットメイカーがBinanceなどの流動性を活かして法定通貨への換金を担います。
なぜ重要か
AIにウォレット操作とクロスチェーン交換の能力を持たせる試みは、暗号資産業界の「インテント(意図)」型UIとして非常に合理的です。従来、異なるチェーン間の送金やガス代の管理は一般ユーザーにとって高い壁でした。裏側の複雑な仕組みを会話インターフェースの背後に完全に隠せるなら、Web3の操作性は大きく向上します。
しかし、私たちはこのアプローチに相応のリスクも感じています。まだアルファ段階にあるAIエージェントに資産の署名権限を委ねることは、プロンプトインジェクションや予期せぬ誤作動による資金流出のリスクと隣り合わせです。
また、Web2サービスでの買い物代行という構想も、現実の運用には高いハードルが立ちはだかります。大手予約サイトや出前サービスは不正防止のために厳格なボット対策や本人確認を敷いています。AIが法定通貨換金を経て人間の代わりに注文を通すには、法規制や規約の壁を越えなければなりません。野心的な自動化ツールとして動向を追う価値は十分にありますが、現時点で多額の資金を預けるのは時期尚早といえます。
情報源 (1)
- cointelegraph.com(新しいタブで開きます)原文cointelegraph.com