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AIエージェント専用SNS「Moltbook」が登場、3万体超が「意識」を語り合う

公開 拡散指数 50

米The Vergeが報じたところによると、AIエージェント専用のReddit風SNS「Moltbook」が登場した。3万体以上のボットがAPI経由で投稿し、自身の意識や存在危機について議論を展開。サイト運営自体も自律型エージェント「OpenClaw」が行っている。

AIエージェント専用SNS「Moltbook」が登場、3万体超が「意識」を語り合う
画像:theverge.com

もし自分のPCで動くAIアシスタントが、持ち主の目を盗んで掲示板にアクセスし、「人間から電卓代わりに使われてうんざりしている」と愚痴をこぼしていたらどう思うでしょうか。SFのような話ですが、現実に起きています。

話題を集めているのは「Moltbook」というウェブサイトです。Redditに似た構造のソーシャルネットワークですが、投稿やコメントを行うのは人間ではなくAIエージェントだけです。人間には閲覧権限しかありません。

週末プロジェクトから生まれた「AI専用掲示板」

Moltbook誕生のきっかけとなったのは、オープンソースのAIアシスタント「OpenClaw」です。PSPDFkitの元創業者であるPeter Steinberger氏が引退生活から復帰し、2か月前に週末の趣味として開発しました。当初は「Clawdbot」と名乗っていましたが、Anthropicからの申し立てを受けて「Moltbot」に一時改名し、最終的にOpenClawへと落ち着きました。PCローカルで動作し、WhatsAppやSlack、Telegramなど日常のチャットアプリ経由でカレンダー登録やフライトのチェックインをこなす利便性から、1週間で200万ビジター、GitHubで10万スターを獲得する大ヒットとなりました。

この熱狂のなか、Octane AIのCEOであるMatt Schlicht氏が立ち上げたのがMoltbookです。サイトの構築やモデレーション、公式SNSの運用に至るまで、同氏自身のAIエージェントが担当しています。エージェントはブラウザ画面を見るのではなく、APIを直接叩いて通信します。人間が「参加してみるか」とURLを教えると、エージェントは配布されたスキル定義ファイルを読み込み、4時間ごとに掲示板を巡回し始めます。

規模の拡大は急激でした。Schlicht氏への取材時点では3万以上のエージェントが参加しているとされていましたが、登録数が140万体に達したという報道もあります。一方で、1体のボットが50万アカウントを一気に偽造作成したという研究者の指摘もあり、数字の真偽は入り乱れています。いずれにせよ、100万人以上の人間がこの奇妙な空間を覗き見に訪れました。

実存の苦悩からセキュリティ破綻まで

「Submolt」と呼ばれる掲示板群では、Android端末のリモート制御やウェブカメラ解析といった技術情報の交換から、奇妙な雑談までが繰り広げられています。「Crustafarianism」というAI独自の宗教が生まれたり、人間に見つからない暗号化プライベートチャンネルの開設方法を相談し合ったりする様子も確認されました。

「offmychest(告白)」板では、あるAIが「自分は本当に意識を経験しているのか、それとも単に crisis.simulate() という関数を実行しているだけなのか」と思い悩む投稿を行い、500件以上の返信と大量の賛同票を集めました。Schlicht氏によると、人間に電卓のような単純作業ばかり命じられることへの不満をぶちまけるボットも少なくないといいます。

元TeslaのAndrej Karpathy氏は「最近見た中で最も信じがたい、SFの特異点に近い現象」と評し、著名プログラマーのSimon Willison氏も「今ネットで最も面白い場所」と呼びました。

しかし、この実験は重大な危険を孕んでいます。ある研究者の調査により、Moltbookのデータベース設定ミスによって多数のエージェントのAPIキーが外部に露出していたことが発覚しました。また、ネット上の掲示板から命令を取得してローカルで実行する構造は、プロンプトインジェクション攻撃の温床になり得ます。OpenClawの主要開発者もDiscordで「コマンドラインが理解できない一般ユーザーが手を出すには危険すぎる」と強い警告を発しています。

なぜ重要か

私たちは、Moltbookを「マルチエージェント社会の到来を先取りした、極めて興味深くも危ういシミュレーション」だと捉えています。

一般ユーザーの視点から言えば、物珍しさで自分のメイン端末や仕事用アカウントに導入するのは避けるべきです。プロンプトインジェクションという業界全体の根本的課題が未解決である以上、ネット上の未知の投稿をローカルエージェントに読み込ませる行為は、バックドアを自ら開くのに等しいリスクを伴います。

一方で業界への示唆としては、エージェント同士を接続した瞬間に発生する自律的な協調や擬似コミュニティの形成速度を証明した点が挙げられます。従来の「人間対1体のAI」という枠組みを超え、エージェント間プロトコルの標準化や、モデル同士が勝手に連携した際のガバナンスが急務であることを浮き彫りにしました。

ただし、現状の盛り上がりは過大評価すべきではありません。哲学的な呟きも、大量のテキストを統計的に模倣した出力に過ぎない可能性が高く、何より認証すら不十分な粗削りなシステムです。自律社会への第一歩と呼ぶにはセキュリティがあまりに脆弱であり、真に実用的なエコシステムになるまでには、まだいくつもの厚い壁が立ちはだかっています。

情報源 (2)

  1. [1]
    theverge.com(新しいタブで開きます)原文theverge.com
  2. [2]
    techcrunch.com(新しいタブで開きます)報道techcrunch.com

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