スマホ単体で動く動画生成AI「Mobile-Wan」:5秒の映像を約20秒で生成
Qualcommの研究チームがスマートフォン上でローカル動作する動画生成システム「Mobile-Wan」を公開した。アリババの50億パラメータモデルを蒸留と剪定で圧縮し、スマホだけで5秒の480p動画を約20秒で出力できる。
Mobile-Wanは、Qualcomm AI Researchがオープンソース化したモバイル向け動画生成システムだ。クラウドのGPUサーバーに接続することなく、市販のスマートフォン単体でテキストから動画を生成できる。
テキストプロンプトを入力すると、端末内で約20秒かけて、5秒間・解像度480×832・毎秒16フレームの動画が出力される。Hugging Faceで公開されているファイル全体の容量は9.9GBに収まっており、スマホのストレージにも現実的に収まるサイズだ。
50億パラメータをスマホに収めた仕組み
これまでスマホ上で動く動画生成モデルといえば、ハードウェアの制約から4億〜18億パラメータ程度の小型モデルが主流だった。だが小型モデルでは映像の精細感や動きの一貫性を保つのが難しい。そこで研究チームは、アリババの大規模モデル「Wan2.2-5B」をベースに選び、構造的な圧縮と蒸留によってスマホへ移植する手法をとった。
まず導入されたのがチャンク単位の再帰生成だ。動画フレーム全体を一度に処理するのではなく、因果的線形アテンションを組み合わせて動画を小分けに生成する。推論時にはRNNのように動作するため、メモリ消費をほぼ一定に抑えながら前後のつながりを維持できる。
次に、不要なアテンションヘッドを削ぎ落とすヘッドプルーニングを実施した。動画DiT向けに最適化された学習可能なゲートを用い、計算負荷を大幅に削減している。
さらに、通常の拡散モデルで20〜30ステップかかるサンプリング工程を、蒸留技術によってわずか3ステップにまで短縮した。メモリ消費を抑えた専用VAEデコーダーと組み合わせることで、スマホ単体での約20秒生成を実現している。動画品質のベンチマークであるVBenchでは83.79スコアを記録し、モバイル向け動画生成として最高水準を達成した。
入手方法と注意点
コード、重み、論文はすべて公開されている。プロジェクトページからCodeリンクを開きスクロールすると、スマホへの導入手順と動作環境のセットアップ方法が確認できる。
ただし、すべてが完璧というわけではない。研究チームもサンプルとともに示している通り、激しい動きや複雑なカメラワークではフレーム間の整合性が崩れたり、局所的な歪みが発生したりする失敗例も残されている。
なぜ重要か
Mobile-Wanが示したのは、モバイルAIだからといって最初から小さなモデルを作る必要はなく、実績のある50億パラメータ級モデルを賢く削って移植したほうが結果が良いという事実だ。
スマホ上で完結するAI動画ツールを作りたい開発者にとって、通信コストやサーバー費用をゼロにできるこの設計は大きな参考になる。現時点では生成破綻のリスクもあるが、端末内クリエイティブの未来を体験してみたい技術者なら試す価値は十分にある。
情報源 (2)
- qualcomm-ai-research.github.io(新しいタブで開きます)原文qualcomm-ai-research.github.io
- youtube.com(新しいタブで開きます)報道youtube.com