MIT、言葉で3Dモデルを装飾できる「Style2Fab」開発 機能は損なわず
MITの研究チームは自然言語プロンプトを使って3Dプリント用モデルの外見を自由にカスタマイズできる生成AIツール「Style2Fab」を発表した。モデルの機能部分と装飾部分を自動で分割し、機能性を維持したまま形状や質感を変更できる。専門的なCAD知識がなくても手軽にオリジナル造形物を作れるのが強みだ。

ネットから無料の3Dモデルをダウンロードするのは簡単ですが、それを少し自分好みに改造しようとすると途端に壁にぶつかります。高価で複雑なCADソフトの操作が必要になるうえ、下手に形状を変えれば組み立てられなくなったり強度が落ちたりしてしまうからです。
MITのCSAIL(コンピュータ科学・人工知能研究所)とノースイースタン大学の研究チームは9月15日、テキストプロンプトを入力するだけで機能性を壊さずに3Dモデルの外観をカスタマイズできる生成AIツール「Style2Fab」を発表しました。
機能する部分と見た目の部分をAIが切り分ける
Style2Fabのキモは、3Dモデルを「機能的なパーツ」と「審美的なパーツ」に自動で分割する点にあります。地面に接する底面やパーツ同士の噛み合わせといった部分は機能パーツに分類され、装飾が可能な表面は審美パーツに分類されます。
システムはまずモデルのトポロジーを分析し、曲面の変化などを基に複数のセグメントに分割します。そして、事前にラベル付けされた294個の3Dモデルデータセットと照合し、それぞれの部位が機能的なものかどうかを推論します。ただし、花瓶ひとつ取っても机に置くか天井から吊るすかで必要な強度が変わるため、ユーザーがワンクリックでAIの分類を修正できるヒューマン・イン・ザ・ループの仕組みを取り入れています。
言葉で指示するだけで質感を自在に変更
分類を確定させた後は、プロンプトを入力するだけです。たとえば「モロッコ風アートのスマホケース」や「粗い質感の中国陶器風プランター」と入力すると、Text2Meshと呼ばれるアルゴリズムが作動します。
AIは機能的なセグメントを一切変更せず、審美的なセグメントだけにテクスチャや色、形状の変更を加えます。これにより、見た目はまったく新しいデザインでありながら、元のパーツと狂いなく合致する造形物が完成します。
初心者にとっては複雑なモデリングのハードルが一気に下がり、熟練のメイカーにとっては作業時間を大幅に短縮できるツールになります。研究チームは、指の添え木といったDIY医療器具のパーソナライズにも有効だと説明しています。医療機器としての固定機能を保ったまま服に合うデザインに変えられるため、患者の着用率向上にもつながる見込みです。
なぜ重要か
最近の画像生成や3D生成AIは目覚ましい進化を遂げていますが、生成された3Dメッシュをそのまま3Dプリンタで出力しても、寸法が合わなかったり強度が足りなかったりして実用品にならないことがほとんどでした。
Style2Fabが賢いのは、ゼロから新しい立体をでっち上げるのではなく、既存の検証済みモデルをベースにし、機能部分を「変更不可」と定めてAIの暴走を防いだ点にあります。このアプローチは、Thingiverseなどのオープンソースリポジトリに眠る膨大なデータを、CADスキルを持たない一般ユーザーが再利用するための強力な架け橋になると考えられます。
一方で課題もあります。外観の形状が変わることで重心や耐荷重バランスが崩れ、印刷後に破損しやすくなるリスクはまだ排除できていません。研究チームは現在Googleと協力し、物理的な力学特性も考慮できる拡張を進めています。この課題がクリアされれば、個人の好みに合わせた日用品のオンデマンド製造が一段と現実味を帯びてきそうです。
情報源 (1)
- news.mit.edu(新しいタブで開きます)原文news.mit.edu