マイクロソフト、AIデータセンターの冷却水蒸発ゼロ設計を発表 拠点あたり年間1.25億リットル節水
MicrosoftがAIワークロード向けに冷却用の水蒸発をゼロにする次世代データセンター設計を発表した。密閉循環式のチップレベル液冷を採用し、1拠点あたり年間1.25億リットル以上の節水を見込む。2024年8月以降の新設計に標準採用され、2026年にパイロット運用を開始、2027年後半に稼働予定。

AIチップの発熱が増すにつれ、データセンターの「水がぶ飲み」問題は各地で反発を招いてきた。冷却のために大量の真水が蒸発していく光景は、渇水に悩む地域コミュニティにとって深刻な懸念材料だ。
こうした批判に対し、Microsoftが新たな手を打った。同社はAIワークロード向けに最適化した次世代データセンター設計を公開し、冷却用の水蒸発をゼロに抑えると発表した。1拠点あたり年間1.25億リットル以上の節水につながるという。
水を逃がさない、チップ直結の密閉ループ
従来のデータセンターは、電力消費を抑えるために水の蒸発熱を利用する方式が主流だった。いわば「汗をかいて冷やす」仕組みだが、これでは大量の真水を消費し続けることになる。
今回の新設計は、この蒸発冷却を廃止し、チップレベルの密閉循環式液冷に切り替えたものだ。
施設建設時に一度水を注入すれば、サーバーと冷却機の間を水が密閉されたループ内で循環し続ける。外部へ水蒸気として逃げることもなく、冷却用の真水を新たに補給する必要もない。トイレや給湯室といった生活用水は従来通りだが、最大の消費源だった冷却水は実質ゼロになる。
水資源の利用効率を示す指標(WUE)で見ると、Microsoftの2024年度の平均は0.30 L/kWhで、2021年の0.49から39%改善、初代データセンター時代からは80%低減している。今回のゼロ蒸発設計を採用する拠点は、冷却に関わるWUEをほぼゼロまで引き下げられる見込みだ。
もっとも、蒸発に頼らない機械冷却は電力消費(PUE)を押し上げやすい。Microsoftは、チップレベルの冷却機構によって許容動作温度を引き上げ、高温水に対応した高効率チラーを組み合わせることで電力増加をわずかな範囲(名目上の微増)に抑え込むと説明している。
2026年にパイロット開始、2027年後半に本格稼働
この取り組みは構想段階ではなく、すでに実務ラインに乗っている。2024年8月以降、Microsoftが新規に設計する自社データセンターはすべてこの次世代冷却方式が標準採用されている。
まずは2026年に、アリゾナ州フェニックスおよびウィスコンシン州マウントプレザントのパイロットプロジェクトで運用が始まる予定だ。
新設計に基づいて建設される拠点が本格稼働を迎えるのは、2027年後半を見込んでいる。なお、既存拠点についてはテキサス、ワシントン、カリフォルニア、シンガポールなどで再生水や下水処理水の利用拡大を継続するという。
なぜ重要か
生成AIの拡大に伴い、データセンター建設は各地で電力と水資源の争奪戦を引き起こしている。特に水ストレスの高い地域では住民や自治体との摩擦が深刻化しており、水蒸発ゼロを看板に掲げることは、用地確保や許認可の面で極めて強力な武器になる。
チップ直結の密閉液冷への移行自体は、今後の高発熱AIハードウェアを冷やし切るためにも賢明かつ不可避な選択だと言える。水資源の消費を断ち切る姿勢を明確にした点は評価できる。
ただし、水使用を削った分だけ冷却チラーの電力負荷が増えるトレードオフは残る。各地の送電網がすでに逼迫するなか、わずかな電力増が地域インフラにどう影響するかは慎重に見極める必要があるだろう。他社クラウド大手が同様のゼロウォーター化に追随できるかどうかも今後の注目点だ。
情報源 (2)
- microsoft.com(新しいタブで開きます)原文microsoft.com
- @mscloud(新しいタブで開きます)議論x.com