マイクロソフトが音声合成モデル「MAI-Voice-2.1」発表、45msの超低遅延で即時クローン
マイクロソフトは音声合成モデル「MAI-Voice-2.1」と「MAI-Voice-2.1-Flash」を公開した。微調整なしで即座に声紋を模倣でき、23言語と感情表現に対応する。Flash版は遅延わずか約45msで、リアルタイムの対話AIにおける不自然な間を解消する。

AIの音声アシスタントと話すとき、相手が一瞬黙り込んで「処理中」になるあの独特の間は、どうしても人間味を損なってしまいます。
マイクロソフトはこの遅延を削ぎ落とすべく、新しい音声合成モデル「MAI-Voice-2.1」と、リアルタイム性能に特化した「MAI-Voice-2.1-Flash」をリリースしました。同日発表されたストリーミング文字起こしモデルと組み合わせることで、対話AIのラグを限界まで小さくする狙いです。
45ミリ秒の超低遅延と数秒からの声複製
目玉となるのはMAI-Voice-2.1-Flashのスピードです。モデルの推論遅延は約45ミリ秒に抑えられており、45秒間の音声を生成する際のエンドツーエンド遅延もわずか150ミリ秒にとどまります。
価格は100万文字あたり15ドルで、競合モデルと比べて約60%安価とされています。コールセンターやIVR、スマートアシスタントなど、膨大なリクエストを低遅延でさばく用途に特化した設計です。
一方、品質を優先する標準モデル「MAI-Voice-2.1」は推論遅延が約550ミリ秒で、価格は100万文字あたり22ドルです。こちらはオーディオブックや動画のナレーションなど、表現力の高さが求められるコンテンツ作成向けとなっています。
両モデルとも、わずか数秒の音声サンプルを用意するだけで、追加学習なしに声を即座に再現できるゼロショット音声プロンプティングに対応しています。細かい感情コントロールも可能で、落ち着いた瞑想ガイダンスから熱狂的なスポーツ中継、シェイクスピア調の朗読まで表現し分けられます。
23言語をネイティブの発音で喋り分ける
多言語対応の進化も実用的です。日本語は含まれないものの、英語、簡体字中国語、韓国語、ドイツ語、フランス語など23言語(26地域)に対応しています。
特徴的なのは、同一の話者の声質を維持したまま言語を切り替えられる点です。英語を話していたキャラクターがそのままドイツ語や中国語を話しても声の印象が変わらず、しかもそれぞれの言語特有の自然な発音で発話できます。言語ごとに声優やアセットを切り替える必要がなくなります。
また、同時発表された「MAI-Transcribe-2-Streaming」は、音声を受け取ってから約100ミリ秒で文字起こしの仮説を出力し始めます。年内は1時間あたり0.54ドルの特別価格で提供されます。
各モデルはMicrosoft Foundry、MAI Playground、OpenRouter、Vercel、Azure Voice Liveなどを通じて利用可能で、LiveKitの対応も予定されています。
なぜ重要か
音声対話体験の質は、結局のところ応答までのコンマ数秒にかかっています。人間同士の会話のようなテンポを維持するには、聞き取りから思考、発話までの全工程を圧縮しなければなりません。
今回のマイクロソフトのアプローチは理にかなっていると考えられます。すべてをひとつの巨大モデルでこなそうとせず、リッチな長文ナレーション用の標準版と、45ミリ秒で返すFlash版に分けたことで、開発者は要件に合わせて無駄なくコストを最適化できます。100万文字あたり15ドルという価格設定も、大規模コールセンターの自動化を一気に現実的にします。
数秒の参照音声で声を作れる手軽さは魅力的ですが、そのぶん悪用リスクに対する懸念は残ります。同社は同意確認の安全対策を組み込んでいるとしていますが、現場でどれだけ機能するかは注視が必要です。それでも、ボイスエージェントを構築する開発者にとって、試す価値の極めて高い選択肢が登場したと言えます。
情報源 (2)
- microsoft.ai(新しいタブで開きます)原文microsoft.ai
- microsoft.ai(新しいタブで開きます)報道microsoft.ai