マイクロソフト、Foundryでホステッドエージェント公開:セッション単位で完全隔離
MicrosoftはFoundry Agent Serviceのホステッドエージェントをパブリックプレビュー公開した。セッションごとにハイパーバイザー分離されたサンドボックスと永続ファイルシステムを提供し、待機時はゼロスケールしてコストを抑える。LangGraphなど任意のフレームワークに対応する。

ローカル環境でコードを書き、ファイルを編集しながら自律的に動くAIエージェントを作るのは、今やそれほど難しくありません。しかし、そのエージェントを企業の数千人の社員向けに安全にデプロイしようとすると、インフラの壁に突き当たります。
従来のWebコンテナは複数ユーザーでインスタンスを共有する前提で作られているため、エージェントが任意のコードを実行したりファイルを書き換えたりする環境では、情報漏洩やデータ混在のリスクが大きすぎるからです。
米マイクロソフトは4月22日、Foundry Agent Serviceにおいて「ホステッドエージェント(Hosted Agents)」のパブリックプレビューを発表しました。AIエージェント向けに特化した新しいマネージドコンピュート環境です。
セッションごとのVM分離と「ゼロ課金」からの復帰
今回発表された基盤の最大の特徴は、プロセスレベルの分離ではなく、エージェントセッションごとに独立したハイパーバイザー分離のサンドボックスが割り当てられる点です。
さらに、コストと状態保持の両立にも手が打たれています。エージェントが待機状態に入ると自動で「スケール・トゥ・ゼロ」が働き、アイドル時のコンピュート課金はゼロになります。驚くべきは、再起動時にもファイルシステムや作業ディレクトリの状態がそのまま維持されることです。開発者が外部データベースを用意しなくても、エージェントは前回作業を終えた状態からそのまま作業を再開できます。
セキュリティ面では、各エージェントに専用の「Entra Agent ID」が付与されます。TeamsやM365 Copilot経由で人が操作する際はOAuthの代理(OBO)フローでユーザー権限を引き継ぎ、バックグラウンドの自律タスクでは独自のマネージドIDで認証を行います。
フレームワークを縛らない点も特徴です。LangGraphやClaude Agent SDK、OpenAI Agents SDKのほか、Semantic KernelとAutoGenを統合して正式版となった「Microsoft Agent Framework v1.0」にも対応し、azd deployコマンド1つで配備できます。
なぜ重要か
エージェントの試作品を作るハードルは下がりましたが、企業が本番運用に二の足を踏んでいた原因は、モデルの性能不足ではなく「セッション間のデータ隔離」「権限管理」「待機コスト」という泥臭いインフラ課題でした。
私たちは、マイクロソフトのこのアプローチは非常に巧みだと考えます。特定の大規模言語モデルで囲い込むのではなく、自社の最大の強みである仮想化技術、EntraによるID管理、そしてTeamsという業務導線を組み合わせて、エージェント運用の「標準インフラ」を押さえに来たからです。
企業内の開発者にとっては、面倒なサンドボックス管理や状態同期の仕組みを自作することなく、安全に社内展開できる環境が整った価値は小さくありません。今すぐ検証を始める価値は十分にあります。
一方で、スケール・トゥ・ゼロとはいえ、多数のセッションのディスク状態を保持し続けるストレージ費用や、高頻度なハイパーバイザー起動に伴うレイテンシが大規模運用でどう影響するかは注視が必要です。それでも、クラウドの主戦場が「モデルの推論インフラ」から「エージェントの安全な実行基盤」へとシフトしたことを決定づける動きと言えます。
情報源 (1)
- devblogs.microsoft.com(新しいタブで開きます)原文devblogs.microsoft.com