Meta、WhatsAppにMeta AIの秘密チャット導入:会話は自社でも閲覧不能
Meta は WhatsApp および Meta AI アプリ向けに「Incognito Chat」を発表した。Private Processing 技術を採用し、会話内容は Meta を含め外部から一切閲覧できず、デフォルトで消去され保存もされない。健康や金融などの相談を想定しており、今後数カ月かけて順次展開される。

体調の不安やローンの相談、あるいは上司への角の立たない返答の文面など、生成AIに最も打ち明けたい悩みほどプライベートなものはありません。しかし、多くのAIサービスのシークレット機能は履歴を画面から消すだけで、サーバー側にはデータが残っているのが実情です。先月にはロイターが、AIとの対話履歴が法廷闘争で不利な証拠として使われるリスクを弁護士が警告していると報じました。
こうした懸念に対し、Metaが動きを見せました。同社は5月13日、WhatsAppおよび独立版Meta AIアプリにおいて、運営元であるMetaですら内容を閲覧できない「Incognito Chat(シークレットチャット)」の提供を開始すると発表しました。
画面ロックで完全消滅、最新モデルが即座に忘却
使い方はシンプルで、Meta AIとの1対1のチャット画面に新設されるアイコンをタップするだけです。
この機能は、WhatsAppが整備してきたプライベートプロセッシング技術を基盤にしています。安全な隔離環境内で処理が行われるため、Meta自身もメッセージの中身を見ることはできません。
対話内容はサーバーに保存されず、チャットを閉じると自動的に消去されます。アプリを終了したりスマートフォンを画面ロックしたりした瞬間にセッションは強制終了し、AIはその会話の文脈を完全に忘れる仕組みです。
WhatsAppの製品担当バイスプレジデントであるアリス・ニュートン・レックス氏によると、従来のメッセージ要約などの補助機能には小型モデルを使っていましたが、今回のシークレットチャットには先月リリースされたばかりの最新モデル「Muse Spark」を投入したといいます。
さらにMetaは、今後数か月以内に「Side Chat」という新機能も追加する予定です。現在のWhatsAppでは、AIに質問するにはグループ内でメンションして全員に見せるか、文面を別ウィンドウにコピー&ペーストする必要がありました。Side Chatを使えば、会話の文脈をAIに把握させつつ、相手に知られずに自分だけの画面で助言を受けられるようになります。
なぜ重要か
私たちは、この取り組みがプライバシーに敏感な層をAIチャットに引き込む極めて現実的な一手になると考えています。
ユーザーにとっての価値は明確です。健康問題や転職、金銭トラブルといった極めてデリケートな相談を、データ収集や法的リスクを恐れずに最先端モデルへ投げられるようになります。既存のChatGPTやClaudeの一時チャット機能と比べても、スマホを閉じれば即座にメモリから消去される仕様は、日常的な相談相手として安心感があります。
業界全体にとっても、数十億人のユーザー基盤を持つWhatsApp上でエンドツーエンド暗号化の思想をAIに持ち込んだ意義は小さくありません。特にグループチャットの文脈を盗み見されずにAIへ渡せるSide Chatは、他の単体チャットボットには真似しにくい強力な機能です。
一方で、誤って画面をロックしただけで長文のやり取りが全て消えてしまう不便さは残ります。また、プライバシー問題で長年批判を浴びてきたMetaが「当社ですら見られない」と主張しても、第三者による技術検証が伴わなければ、どこまでユーザーの信頼を勝ち取れるかは未知数です。
情報源 (2)
- about.fb.com(新しいタブで開きます)原文about.fb.com
- techcrunch.com(新しいタブで開きます)報道techcrunch.com