Meta、生成AIを活用した次世代レコメンド技術を発表:ユーザー意図を直接予測
Metaの研究チームが、生成モデルを用いて推薦システムを刷新する2本の論文を公開した。従来の類似度検索の代わりに次に来るアイテムを直接予測する「LIGER」と、ユーザーの潜在的な好みを抽出する「Mender」を提案し、計算コスト削減とコールドスタート課題の解決を目指す。

InstagramやThreadsのタイムラインを更新した際、推薦システムが数十億件もの候補からコンテンツを選び出す処理は、膨大な計算リソースを消費します。
従来の主流は、ユーザーとアイテムを高次元ベクトルに変換して類似度を総当たりで比較するデンス検索でした。しかしカタログが巨大化するにつれて、ストレージと計算コストは限界に近づいています。Metaが発表した2本の最新論文は、この推薦の仕組みを生成AIの「次の単語予測」に置き換えるアプローチを提示しています。
データベース検索から「次のセマンティックID予測」へ
Metaが注目する生成型検索は、アイテムを検索するのではなく、ユーザーの行動履歴から次のアイテムを予測します。
TIGERのようなシステムをベースに、まず各アイテムのテキストや属性から文脈情報を含む「セマンティックID(SID)」をエンコーダーで生成して保存します。
続いてTransformerモデルが、過去にユーザーが接触したSIDの並びを入力として受け取り、次に接触する可能性が高いSIDを直接生成します。データベース全体を毎回スキャンする必要がないため、アイテム数が増えても計算やストレージのコストが一定に保たれます。生成モデル特有の温度パラメータを調整することで、推薦の多様性をコントロールできる利点もあります。
冷静なハイブリッド設計「LIGER」と「Mender」
ただし、純粋な生成型検索には弱点があります。学習データに含まれるアイテムに過学習しやすく、新着アイテムや新規ユーザーに対応できない「コールドスタート問題」です。
そこでMetaは、生成型検索とデンス検索を統合したハイブリッドモデル「LIGER」を開発しました。学習時には類似度スコアと次トークン予測の両方を目標に設定し、推論時には生成機構で候補を選んだ上でコールドスタートのアイテムを追加し、埋め込みベクトルで最終ランキングを行います。
さらに別の論文では、マルチモーダル選好判別器「Mender」を提案しています。ユーザーがレビューで褒めた内容や不満といった文脈を大規模言語モデル(LLM)で要約し、ユーザーの好みとして抽出します。メインの推薦モデルは、行動履歴とこの要約された好みの両方を手掛かりにして次のSIDを予測します。
なぜ重要か
一般ユーザーにとっては、単なるクリック履歴の追従ではなく、レビューに書いた細かな要望や好みの変化を汲み取った精度の高いフィードが期待できます。
業界全体にとって、推薦アルゴリズムをベクトル検索からLLMネイティブな生成アプローチへ移行させる動きは、今後のインフラ設計を大きく変える可能性があります。アイテム数が増加しても推論コストが跳ね上がらない特性は、大規模ECやメディアプラットフォームにとって強力なコスト削減要因になります。
私たちは、Metaが純粋な生成モデルだけに走らず、LIGERのようなハイブリッド型を選択した点を現実的で賢明だと考えます。コールドスタートへの弱さを放置すれば、新商品や新規投稿が届かなくなりビジネスが成立しないためです。今後は、ミリ秒単位の超低遅延が求められる本番広告配信などで、セマンティックID生成のオーバーヘッドをどこまで抑えられるかが普及の鍵になりそうです。
情報源 (1)
- venturebeat.com(新しいタブで開きます)原文venturebeat.com