メイヨー・クリニック、患者の写真から術後感染を検知するAIを開発
報道によると、Mayo Clinicの研究チームは患者が提出した写真から手術部位感染を検知するAIシステムを開発した。6000人以上・2万枚超の画像で学習し、切開部の特定精度は94%に達する。遠隔モニタリングでの医師の負担を減らし、在宅回復期における感染症の早期発見につながると期待されている。

術後の退院後に創部が少し赤くなっているのを見つけたとき、それが正常な回復過程なのか、それとも感染症の兆候なのかを患者自身が判断するのは困難です。現状では、患者がポータルサイトに傷口の写真をアップロードし、多忙な医師が手動で確認するのを待つしかありません。
メイヨークリニックの研究チームは、患者が撮影して投稿した創部写真から手術部位感染(SSI)を自動検出するAIシステムを開発しました。この研究成果は米医学誌「Annals of Surgery」に掲載されています。
傷口の特定から画質判定まで自動化
患者が自宅で撮影する写真は、ピントが合っていなかったり照明が暗かったりと撮影環境がばらつきます。今回開発された Vision Transformer ベースのAIモデルは、感染の有無を判定するだけでなく、画像の品質評価や切開部の特定も行います。
モデルの学習には、メイヨークリニック傘下の9病院、6000人以上の患者から収集した2万枚以上の画像が使われました。検証の結果、切開部を特定する精度は94パーセント、感染検出のROC曲線下面積(AUC)は81パーセントに達しています。
研究の共同シニア著者である Cornelius Thiels 医師によると、ディープラーニングを用いることで人間の目では捉えにくい輪郭やパターンの特徴を抽出できるとのことです。将来的には切開創だけでなく、体内に挿入したドレーンやストーマの写真判定への応用も目指しています。
AIの肌色バイアスへの対策
医療用画像AIにおける最大の課題の一つが人種や肌色によるバイアスです。過去の多くのモデルでは、白人のデータに偏っていたために有色人種の識別精度が落ちる問題が指摘されてきました。
メイヨークリニックのチームはこの点に配慮し、初期研究で人種別に層別化した感度分析を実施しました。その結果、グループ間での性能差は同等であり、偏りは最小限に抑えられていることが確認されました。現在はさらに肌のトーン別に細分化した検証を進めています。
米国疾病予防管理センター(CDC)の調査によると、手術部位感染は医療関連感染の20パーセントを占め、米国全体で年間約33億ドルの医療費負担をもたらしています。感染が発生すると入院期間が平均9.7日延び、1回の手術あたり2万ドル以上の追加費用が発生します。
なぜ重要か
自宅療養中の患者にとって、スマートフォンで写真を撮るだけで異常の有無を素早く確認できるようになる安心感は計り知れません。感染を初期段階で発見できれば、重症化して再入院するリスクを大幅に減らせます。
私たちは、このシステムを「医師の代替」ではなく「トリアージの自動化ツール」として設計した点が非常に賢明だと評価しています。外来手術や遠隔モニタリングの増加で、医師は患者から送られてくる大量の創部画像の目視確認に追われています。低品質な画像を弾き、リスクの高い症例を優先順位付けできるワークフローは、医療現場の負担軽減に直結します。
一方で、感染検出のAUCが81パーセントにとどまる点は留意が必要です。これはスクリーニング用途としては有用ですが、単体で確定診断を下せる水準ではありません。自宅での不揃いな撮影環境下でどこまで誤検知を防げるか、そしてメイヨークリニック以外の一般的な医療機関へ普及させられるかが今後の実用化の鍵を握ります。
情報源 (1)
- rdworldonline.com(新しいタブで開きます)原文rdworldonline.com