MITら、機械学習でマッコウクジラの「アルファベット」を発見
MIT CSAILとProject CETIの研究チームは、機械学習を用いてマッコウクジラのクリック音データ8,719件を解析し、独自の組み合わせコード体系を発見した。人間が音節を組み合わせて単語を作るような二重性が、海洋哺乳類の会話にも存在する可能性を示している。

人間以外の地球上の生命が、どれほど高度なコミュニケーション体系を持っているのか。その長年の謎に、AIがひとつの答えを示しました。
MIT CSAILとProject CETIの研究チームは、機械学習を活用してマッコウクジラの音声アルファベットを発見したとする研究論文を発表しました。マッコウクジラが発するクリック音の連なりは無秩序な鳴き声ではなく、明確な組み合わせ規則を持った記号システムであることが判明しました。
マッコウクジラはコーダと呼ばれる連続したクリック音を使って仲間と意思疎通を図ります。これまでの研究では約150種類のコーダが確認されており、その一部が個体や群れの識別に使われていることは知られていましたが、全体的な構造や情報伝達能力は謎に包まれたままでした。
クリック音を音楽用語で解き明かす
今回の研究は、昨年6月に亡くなった高名な海洋生物学者ロジャー・ペイン氏の着想を受け継いでいます。チームは研究者のシェーン・ゲロ氏が東カリブ海のドミニカ島沖で収集した8719件のコーダデータを機械学習で分析しました。
CSAIL所長のダニエラ・ルス氏によると、モデルで音声を可視化し、出力されたパターンを生物学者とともに詳細に検証していく手法が取られました。
従来の単一のコーダを個別に調べるアプローチとは異なり、今回はクジラ同士の対話の文脈に着目しました。テンポ、リズム、装飾音、ルバートといった音楽用語を用いて分類したところ、これらが組み合わさることで豊かな表現を生み出していることが突き止められました。
これは言語学で言う「二重性」に該当する可能性が高いとされています。意味を持たない音の要素を組み合わせて意味のあるまとまりを作る仕組みであり、人間の言語以外でこの特徴が確認された初の事例になる可能性があります。
なぜ重要か
今回の成果は、生物音響学におけるAI活用の大きな前進だと私たちは考えます。人間の耳や従来の手作業では見落とされがちだった微細なリズムの揺らぎや速度変化を、機械学習が客観的な構造として抽出できることを実証しました。
マッコウクジラが選ばれた理由は、その音声が離散的なクリック音で構成されており、連続的な鳴き声を持つザトウクジラなどに比べてデータ分析がしやすかったためです。明確なシグナルを持つ対象から着手したアプローチは極めて合理的です。
ただし、冷静に見るべき点もあります。今回の発見はあくまで音の構成要素であるアルファベットを特定した段階であり、クジラたちが何を話しているかという語彙や文法の意味論が解読されたわけではありません。
それでも、自然界の未知のデータを解き明かす道具としてAIが極めて有効であることを示した意義は大きく、今後の異種間コミュニケーション研究の基盤になるはずです。
情報源 (1)
- techcrunch.com(新しいタブで開きます)原文techcrunch.com