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業界動向

米ライフ・バイオサイエンシズ、細胞リプログラミング若返り療法の臨床試験へ:FDAが承認

公開 拡散指数 43

Life Biosciencesは細胞リプログラミングを用いた若返り療法「ER-100」のヒト臨床試験についてFDAの承認を得たと発表した。緑内障患者の片眼に3種類の遺伝子を注入し、抗生物質でスイッチを制御しながら細胞の初期化を試みる。腫瘍化などのリスクが懸念される中、まずは少人数の患者で安全性を検証する。

米ライフ・バイオサイエンシズ、細胞リプログラミング若返り療法の臨床試験へ:FDAが承認
画像:technologyreview.com

ダボス会議でイーロン・マスク氏が「老化は解決可能だ」と発言した直後、ハーバード大学のデビッド・シンクレア教授がX上で「治験が間もなく始まる」と応じ、話題を呼んだ。

シンクレア氏が共同創業した米ボストン拠点のスタートアップ、Life Biosciencesは、開発中の若返り治療法「ER-100」について、FDAからヒト臨床試験の承認を取得したと明らかにした。細胞リプログラミングを用いた本格的な老化逆転の臨床試験は、世界で初めてとなる。

抗生物質でON/OFFする眼の「初期化スイッチ」

今回の治験が対象とするのは、眼圧の上昇によって視神経が傷つき失明に至る恐れのある緑内障だ。

細胞リプログラミングは、成熟した細胞を受精卵に近い状態へ戻す「山中因子」の発見に基づいている。しかし、生体内で完全な初期化を行うと細胞がガン化するリスクが高い。そこで同社は、4つの因子のうち3つ(OCT4、SOX2、KLF4)だけを用い、細胞の役割を保ったまま若さだけを取り戻す「部分リプログラミング」を採用した。

治験では約10名余りの患者を対象に、ウイルスベクターを使って片方の眼だけにこの3つの遺伝子を注入する。

暴走を防ぐため、遺伝子には特殊なスイッチが組み込まれている。患者が低用量の抗生物質ドキシサイクリンを服用している間だけ遺伝子が働き、計画では約2カ月間服用を続けながら経過を観察する。

過去のマウス実験では、損傷した視神経の再生が確認され、生物学的な年齢マーカーが50〜75%若返ったと報告されている。

最前線を走るが、懸念材料も山積み

リプログラミング領域は「バイオ界の生成AI」とも呼ばれ、Altos Labsなどの新興企業に数億ドル規模の投資が集まっている。その中でLife Biosciencesは、他社に先駆けてヒトへの応用へ漕ぎ着けた。

だが、リスクがないわけではない。競合のShift BioscienceのCEOは、同社のアプローチについて「手持ちの因子で先行しているだけで、最適な組み合わせとは言えない」と指摘する。また、遺伝子スイッチには大腸菌やヘルペスウイルス由来の配列が使われており、マウスでは一般的でもヒトの免疫系が拒絶反応を起こす懸念が残る。

シンクレア氏自身も、過去にレスベラトロールなどの効果を過剰に宣伝したとして批判を浴びた経緯がある。

なぜ重要か

今回の臨床試験において、同社がターゲットを「眼」に絞った判断は極めて合理的だと言える。

眼は外部から隔離された小さな器官であり、全身への影響が少ない。競合が述べている通り、万が一深刻な副作用が出ても、患者にはもう片方の眼が残されている。局所的な疾患である緑内障を足がかりにすることで、安全性のハードルを大きく下げた形だ。

一般の人々にとって、これがすぐに「若返りの万能薬」になるわけではない。今回はあくまで安全性を確かめる第1相試験であり、過度な期待は禁物だ。

しかし業界全体にとっては、動物実験と理論にとどまっていた若返り医療が、初めて現実の治験へと足を踏み入れた転換点となる。もし腫瘍を作らずに安全性を証明できれば、他の臓器や全身の抗加齢治療に向けた大きな試金石になるはずだ。

情報源 (1)

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    technologyreview.com(新しいタブで開きます)原文technologyreview.com

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