LenovoがハイブリッドAI戦略を発表:Nvidiaと連携しPCローカルでのモデル実行を目指す
LenovoはTechWorld 2023でハイブリッドAI戦略を発表し、パブリックモデルと企業向けプライベートモデル、個人の端末向けモデルを統合する構想を示した。Nvidiaとの協業を拡大し、モデルのプルーニングや量子化によってPC上でもLLMを軽量に動作させる技術開発を進めている。

ハードウェア大手のレノボは、開催中の「TechWorld 2023」において、生成AIを自社ポートフォリオ全体へ浸透させる包括的な「ハイブリッドAI」戦略を発表しました。クラウド上のパブリックモデル、企業内のプライベートモデル、そして個人のデバイス上で動くパーソナルモデルを組み合わせる青写真を描いています。
巨大モデルを圧縮してPC上で動かす
レノボのCTOであるヨン・ルイ(Yong Rui)氏は、記者説明会で「AIの未来はハイブリッドAIエコシステムにある」と強調しました。利用するパブリックLLMの具体的な名称については明言を避け、パートナー企業への依存を基本方針とすることを明らかにしています。
その一方で、レノボが独自に力を注ぐのがプライベートおよびパーソナル領域です。企業向けには、ベクトルデータベースや社内ナレッジを活用し、ERPやCRMといった基幹システムと連携する「ジョイント・ファインチューニング」と呼ばれる手法を確立しました。
さらに注目されるのが、個人向けPCでAIを動作させるための軽量化技術です。巨大なGPUクラスタを必要とせずローカル端末で動かせるよう、モデルの枝刈り(プルーニング)と量子化を組み合わせた圧縮技術を開発しました。加えて、クエリの解釈や暗号化・復号を担うデータ管理・プライバシープロキシモジュールを組み込むことで、企業データの保護を図るとしています。
Nvidiaとの協業を強化、専用ワークステーションも投入
ハードウェア面では、長年のパートナーであるNvidiaとの提携拡大を発表しました。NvidiaのGPUを搭載し「Nvidia AI Enterprise」ソフトウェアに最適化したサーバー「ThinkSystem SR675 V3」やワークステーション「ThinkStation PX」を展開します。
さらに両社は、「Nvidia Omniverse」に最適化した新しいハードウェアの開発にも着手しており、こちらは2024年に投入される予定です。レノボでHPCおよびAI事業を率いるスコット・ティーズ(Scott Tease)氏は、「クラウドは膨大なイノベーションをもたらすが、AIが存在する唯一の場所ではない」と述べています。
サービス部門でも、生成AIを活用して従業員向けサポートを自動化するデジタルワークスペース「Care One」や、IT環境の設計を支援するサステナビリティエンジンなどを打ち出しました。
なぜ重要か
私たちは、レノボが自前で大規模な基盤モデルの開発に深入りせず、ハードウェアベンダーとしての強みである「エッジへの落とし込み」と「システム統合」に徹した点は非常に現実的で賢明だと考えています。
企業が生成AIの導入をためらう最大の理由は、機密データの漏洩リスクと莫大なクラウドインフラコストです。レノボが提示したように、基底システムと連携しつつデータを外部に出さず、PC上でモデルを圧縮動作させるアプローチは、多くの現場にとって実用的な選択肢になり得ます。
ただし、課題もあります。パブリックモデルを外部パートナーに依存し、ハードウェアもNvidiaに頼っている以上、独自の差別化要因となるのは圧縮技術やプライバシー制御といった中間レイヤーに限られます。将来的にOSベンダーや半導体ベンダーが同様の機能を端末標準として組み込んできた場合、どこまでレノボ独自の付加価値を維持できるかは不透明です。それでも、企業に対して「AI PCへの買い替え」を促す説得力のある材料をいち早く提示した意義は大きいといえます。
情報源 (1)
- venturebeat.com(新しいタブで開きます)原文venturebeat.com