オラクル創業者エリソン氏、国民の医療・ゲノムデータをAI用「単一DB」に統合すべきと提言
報道によると、オラクルのラリー・エリソン会長は、分散した国民の医療記録やゲノムデータなどを単一のデータベースに統合し、AIに活用させるべきだと提言しました。医療費削減や不正検知に役立つと主張する一方、データ一極集中に伴うプライバシーやサイバー攻撃への懸念も浮上しています。
もし政府が国民のすべての電子カルテや検査結果、さらにはDNAゲノムデータまでを1つの巨大なデータベースに集約し、AIに自由に読み取らせるとしたらどうでしょうか。
プライバシーの観点からは背筋が寒くなるような話ですが、米オラクルの共同創業者で会長を務めるラリー・エリソン氏は、それこそが不可欠な一歩だと主張しています。
2月14日付の米フォーチュンなどの報道によると、エリソン氏はドバイで開催された世界政府サミットで英国のトニー・ブレア元首相と対談し、政府機関が持つ膨大な国民データの活用法について持論を展開しました。
「3000のDB」を1つに統合せよ
エリソン氏は、現状の行政データは細分化されすぎており、AIモデルに読み込ませることが極めて難しいと指摘しました。
「このデータベースに行けば国の全データがある」という状態ではなく、実際には「3000ものデータベースを回らなければならない」のが現状だと同氏は語ります。
そこでエリソン氏が提言するのが、医療記録、診断データ、電子カルテ、さらには政府が収集したゲノムデータまでを、AIが扱いやすい単一の国家データベースへ一元化することです。
狙いは大きく2つあります。1つは医療費の抑制と診断精度の向上です。国民規模の健康・遺伝情報にAIがアクセスできれば、早期発見やより優れた治療法の開発が可能になるといいます。
もう1つは政府内の不正検知です。エリソン氏は友人であるイーロン・マスク氏が率いる「政府効率化省(DOGE)」の活動に触れ、公金の無駄遣いを暴くためにもAIによる一元的な監視が必要だと訴えました。
さらにエリソン氏は、プライバシーとデータ主権の観点から、AIインフラとなるデータセンターは港湾や空港と同じく「自国の領土内」に建設しなければ無意味だと強調しました。
ハッカーへの格好の標的
しかし、国家データを1か所に集める構想には強い懸念がつきまといます。最大の弱点は、ハッカーにとってこれ以上ない標的になってしまうことです。
米政府機関はすでにサイバー攻撃に晒されており、昨年12月にも米財務省が中国政府系ハッカーによる大規模な侵入被害を受けたと報じられたばかりです。
これに対しエリソン氏は、現在のデジタルツールがあまりに原始的だから突破されるのだと反論し、システムの根本的な近代化こそが解決策だと主張しています。
なぜ重要か
今回の発言は、行政サービスの効率化という名目を掲げつつも、オラクルの本業に直結した巧みなポジショニングだと私たちは捉えています。
一般市民の視点に立てば、病歴やDNAという究極の個人情報を国が一元管理しAIに預けるリスクは計り知れません。情報漏洩が一度起きれば取り返しがつかず、国民の納得を得るのは極めて困難です。
一方でエンタープライズITの視点では、何千もの分散した行政システムを統合し、主権型データセンターを国内配備する需要は莫大なビジネスチャンスになります。データベースとインフラを牛耳るオラクルにとって、これほど都合の良い未来図はありません。
行政の非効率をAIで正すという方向性自体は合理的ですが、防御側の体制が整わないまま機微な遺伝情報まで単一DBに押し込むのは、リスクとリターンのバランスを欠いているように見えます。
情報源 (2)
- theregister.com(新しいタブで開きます)原文theregister.com
- fortune.com(新しいタブで開きます)報道fortune.com